カナリア諸島ワイン、日本市場に注目 8つの島と11の保護原産地呼称 物語を紡ぐ多様なワインの魅力【PR】
国際ワインの新たな輸出先として日本市場への注目が高まっている。米国が諸外国に対して課す高関税措置によって、ヨーロッパから米国へのワイン輸出が減少する可能性があるからだ。この措置は数ヵ月前に発表されていたが、米国と欧州委員会との間で貿易協定として正式に公表された(2025年7月27日)。これにより、多くの国際的なワイン生産者が輸出先として日本へ関心を移すと予想されている。
こうした中7月15日、カナリア諸島ワインに特化したイベントが初めて東京で開催された。カナリア諸島自治州政府(スペイン)主催によるこのイベントには、同諸島のワイン業界関係者が参加。ホテル・レストラン・カフェなどHORECA業界関係者、輸入業者、卸売業者、ジャーナリスト、ワイン分野のインフルエンサーなど約70名が来場し、カナリア諸島のワイナリー代表者が、保護原産地呼称(PDO)や同地域のユニークで多様性に富んだ高品質なワインの特徴を紹介する場となった。
イベント冒頭で、カナリア諸島自治州政府のナルバイ・キンテロ農畜水産食料大臣は、ヨーロッパ産ワインに対して課せられる15%の関税について懸念を示した。「カナリア諸島の生産者がこの価格上昇を吸収するのは困難であるため、数ヵ月前から第一次産業の代表者と会合を重ね、こうした政策の影響を評価するとともに、輸出量の約32%を占める米国市場に代わる選択肢として日本市場を模索している」と述べた。

また、イベント内および日本食糧新聞へのインタビューにおいてキンテロ大臣は、日本でプレミアムワイン市場が成長していることや、富裕層の存在、オーガニックワインへの関心の高まりを指摘。「日本では卓越性、本物志向、伝統、土地との深いつながりが評価される文化があり、これらの要素がカナリア諸島ワインにとって大きな可能性をもたらす」と語った。
現時点で日本へのカナリア諸島産ワインの輸出量はまだわずかだが、政府の目標は最終的に全体輸出量の15〜20%を日本が占めるようにすることだ。
「現在、日本に輸出されているカナリア諸島ワインは年間数ロットに限られており、10社ほどが取引している。しかし、すでに高品質かつユニークなワインとして評価されており、高級レストランなどで取り扱われている。今回のミッションは、長期的かつ互恵的な関係の始まりになると確信」と大臣は締めくくった。
8つの島と11の保護原産地呼称(PDO)
カナリア諸島には319のワイナリーがあり(うち242が瓶詰業者)、ブドウ栽培に携わる人は約8000人にのぼる。年間生産量はカナリア諸島全体で1万キロリットル以上となる。ブドウ作付面積は約8000haで、バナナに次ぐ栽培面積という。
8つの島からなるカナリア諸島は、島ごとに独自の個性をもち、火山性土壌によるミネラル感の強いワインを生み出している。ブドウ畑は標高0mから最高約1700mに位置するなど、ヨーロッパで最も高いブドウ畑として知られる。険しい地形により機械化が難しく、多くの作業が今でも手作業で行われており、「ヒロイック・ヴィティカルチャー(英雄的なブドウ栽培)」と呼ばれている。
19世紀にヨーロッパのブドウ畑を壊滅させたフィロキセラの虫害を免れたことで、カナリア諸島のブドウは接ぎ木をせず自根で育つのが特長。樹齢100年を超えるブドウ木も見られる。現在でも50種以上の土着品種が栽培されており、代表的な白ブドウには「リスタン・ブランコ」「マルバシア・ボルカニカ」「ビハリエゴ・ブランコ」、黒ブドウには「リスタン・ネグロ」「ネグラモル」「ビハリエゴ・ネグロ」などがある。
また、カナリア諸島には11の保護原産地呼称(PDO)があり、各島のテロワール(気候風土)を生かした個性的なワイン造りを実践する。ランサローテ島ラ・ヘリアなどの景観に見られる円形の穴(オジョ)に植えるユニークな栽培方法や、ラ・オロタバ渓谷に見られる編み込み仕立て(コルドン・トレンサド)など、島ごとの特色がある。以下が各PDO。
PDOラ・パルマ▽PDOエル・イエロ▽PDOラ・ゴメラ▽PDOタコロンテ・アセンテホ▽PDOアボナ▽PDOバジェ・デ・グイマール▽PDOイコデン・ダウテ・イソラ▽PDOバジェ・デ・ラ・オロタバ▽PDOグラン・カナリア▽PDOランサローテ▽PDOイスラス・カナリアス

火山灰の土壌に掘られた“オジョ(Hoyo)”でブドウを育てる
