『コメ』が病の苦しみと医療費を半減 東京農業大学 客員教授 雜賀慶二

表題に耳を疑う人は多いだろうが、実証による論拠に基づいている。昨今のコメの評価は低く、肥る、糖尿病になると言われるが、これは誤解だ。わが国の財政は、膨大な病人と医療費により危機に瀕するが、主因は進歩した精米機にあると考える。というのは、医療費が 飛躍的に増大した昭和30年(1955)ごろ、人々の生活に変化を与えたものを考えると、コメに行き当たる。歴史上で同じことがあった。

昔からコメをおいしく食べるために、食味を阻害する糠層を可能な限り除去してきたが、深層糠を取り切ることができなかった。だが幕末の頃、砂を混入して精米する「混砂精米法」が開発され、人々の夢だった、真っ白でおいしいコメが実現した。ただし「江戸煩い」という、これまでなかった病がまん延し、原因がわからないまま社会問題となった。

しかしその後、「コメに砂を混ぜるのは不潔」と、条令で禁止され江戸煩いも終息。ただし当時の政府は、この病がなぜ急に発症し終息したのか、突き止めてはいなかった。

その後時を経て昭和30年ごろ、砂の代わりに風を吹き込むことで、深層糠が除去できる噴風式精米機が出現し、真っ白できれいなコメが出回り、格段においしくなった。だがこれが今日の医療費増加につながっている。

これを『第2江戸患い』と仮説をたてる。もっとも、日露戦争で多くの人が病死した、昔のビタミンB1不足による江戸煩いとは性質が異なる。当時と副食の相違もあり、自らの体で実証しようと、あえて深層糠が残ったコメの摂取を試みた。

だが、おいしい白米に慣れている舌には耐えられない。そこで、栄養豊富な深層糠の一部で、食味阻害がなく、美味で色も白い「亜糊粉層」を残し白米に仕上げる新型精米機を開発した。常食を数年続けたところ、幼少から病弱で「病気のデパート」といわれた私が、糖尿病を含め、すべての病が治り、見違えるほど健康体になり、医療費が同年輩の全国平均の 15分の1にとどめている。

さらに、多くの健康効果の報告や、社員食堂で採用企業の医療費が全国平均の半額になるなど、上記仮説が正しいことを確信した。要は白米をぬかと共に摂取すると素晴らしい健康食になる。しかも、総合栄養剤や副食には存在しない栄養素が、ぬかのみ存在することが判明した。そもそもコメ(ぬかが付いたままの玄米)は古来「コウベイ」という生薬で、滋養強壮の効能で医食同源の漢方薬だったのだ。

白米の貯蔵デンプンは、効率よく運動エネルギーに活用される。だが、人体で炭水化物の需要と供給の調整や、自己免疫力など、健康栄養成分の供給源として、ぬかに含まれる栄養素は唯一無二と考えられる。そこで白米は、ぬかとともに摂取してこそ医食同源の食材であり、多くの日本人が常食することで、文明病である生活習慣病の予防・改善につながる確信に至った。

だが問題は、白米とぬかを一緒にいかにおいしく食べられるかで、業界は総力挙げて取組むべきだ。

その前に、私のこの論理拙論について多くの識者と論議することが大切だ。西洋医学者にエビデンスを要望する人が多いが、東洋医学の漢方薬には、多くの人々が長年、摂取した実証結果が西洋医学のエビデンスに相当する。もっといえば、食品に含まれるすべての栄養素が複合的に人体に作用するものであり、しかもその食品に含有する全成分の総てが、現在まだ判明しない中にあって、一部成分のエビデンスを求めたところで、どれだけの価値があるか、私自身大いに疑問に感じるところだが、それでも可能な限り提示し論議したい。

バックナンバー