食品D2Cとして注目のおやつ体験BOX「snaq.me(スナックミー)」 なぜsnaq.meに夢中になる人が増えているのか

「マルシェで売っているようなおやつを身近に買って食べられるようにしたい」というスナックミーCEO服部氏の思いからはじまった「snaq.me」。100種類以上のおやつから一人一人にパーソナライズした8種類のおやつを届けるD2C(ダイレクトトゥコンシューマー)モデルとして利用者を大きく広げている同サービス。顧客時間のチーフプランナー / 広報統括 風間 公太氏が、スナックミー CEO 服部 慎太郎氏に話を聞いた。

8個で1,980円のおやつD2C「snaq.me」

風間:ビジネスの概要を教えてください。

服部:おやつが入ったBOXを月1回または隔週で届ける「おやつ体験BOX」のサブスクリプションサービスを提供しています。

風間:一般的にお菓子は低単価商材で、Eコマース(EC)には不向きだと言われています。なぜスナックミーは、お菓子でD2Cモデルでサブスクリプションサービスを開始したのでしょうか?

服部:単価が低く、嵩張るおやつがECに向かないのは理解していたのですが、「自分自身が欲しい」というところからスタートしたサービスだったので、どうすればECでも実現できるかという発想で設計しました。ポスト投函であれば送料が抑えられるなど、成り立たせるための方法を探すことにしました。

風間:絶妙な価格設定だと感じますが、価格設定についてのこだわりはありますか?

服部:お客様とお話する中で、「お菓子を買う」というより、「自分のために届く”BOX”」の楽しさを買っている人が多いことがわかりました。カフェであったり、自分へのご褒美としてスイーツを買ってくるような単価感・ポジションを狙って、この単価で提供しています。

snaq.meの最大の特徴「パーソナライズ」

風間:おやつとしておいしいことだけでなく、体験の楽しさやユーザーフィードバックからうまれるレコメンドの絶妙さがsnaq.meの魅力です。

服部:お客様にサービス利用開始時に答えていただくアンケート「おやつ診断」の回答、マイページ内からのリクエスト、届いたおやつに対して「自分のため」に評価をしていただくことで、パーソナライズが進んでいく仕組みです。100人100通りの組み合わせが存在しますし、毎回違ったものが届きます。

風間:レコメンドにはどんな秘密があるのでしょうか?

服部:評価やリクエストといったデータ数は数百万にものぼります。お客様に好まれるものはデータによって理解できる一方、例えばクッキーを高評価する人にその通りにレコメンドするとクッキーばかりが届くということにもなりかねません。敢えて多少のハズレ値を入れる余地を残し、100%ではないパーソナライズな提案をしています。新しい出会いを提供することもsnaq.meが大切にしている価値観です。

なぜ顧客は積極的におやつの評価をするのか?

風間:ユーザーは毎月積極的にフィードバックするのですか?

服部:回答率は高いです。フィードバックの結果を踏まえて次のBOXに入るものが決まることもあり、真剣にフィードバックしていただいている方が多く、データも溜まりやすい仕組みになっています。

風間:きちんとフィードバックを行えば、より体験が向上するという期待値があるので、回答率が高いというのも納得できますね。

顧客の声を起点にした商品開発とサービス開発

風間:ユーザーとの接点には他にどのようなものがありますか?

服部:フィードバックを得る接点としてはマイページのフィードバック機能やLINEなどデジタルチャネルを活用していますが、「全てのものが接点」です。お届けする際のBOX、BOXに同梱されている冊子、全てのタッチポイントがフィードバックをいただくための顧客接点だと考えています。

風間:同梱されている冊子の内容も、その時々の企画が盛り込まれていて、おやつ体験を豊かなものにしています。デジタル上でのフィードバック以外にも直接お客様に会ってフィードバックいただくこともありますか?

服部:コロナ禍以前ではイベントを年に2回開催して、直接お話しする機会がありました。また毎週4〜5件の電話インタビューで、お客様の声を聞く取り組みを続けています。

風間:お客様の声やデータは、おやつのラインナップだけでなく、商品開発などにも活かされているのでしょうか?

服部:お客様の声は、サービスの開発に活用していることが多いです。例えば、退会した人にもインタビューしています。snaq.meの商品は保存料を使っていないため賞味期限が短いのですが、期限切れでやむを得ず捨てたときに罪悪感を感じた結果、退会に繋がっている人が多いことがわかりました。今は、苦手なものを寄付できる返送用の封筒を同封しています。

風間:封筒はお客様の声をもとに生まれたものだったのですね。

実験の思想。snaq.meを“WEBサービス”と捉える

風間:「開封の儀」といったSNS投稿は初めから練られていたのでしょうか?

服部:最初から設計した体験ではなく、お客様の行動を観察して、少しずつ改善していった結果今のような形になりました。私たちはsnaq.meを「WEBサービス」と捉えています。WEBサービスはベータ版から世に出して常に変化していきます。お客様の反応によって柔軟にサービスを変化させたり、実験をしながらサービスを良くしていく思想を大切にしています。

風間:顧客体験を高める取り組みをどんどん行えるのはサブスクリプションモデルならではです。

服部:新商品を投入する際も、初めは少量を生産・発送し、お客様の反応をみながら、量産するかどうかを決定しています。

モノではなく体験。お菓子とおやつは違う

風間:改めてsnaq.meが大切にしていることを教えてください

服部:社内でも「お菓子」と「おやつ」というキーワードを分けて使っています。お菓子はモノであり、おやつは八つ刻(やつどき)という午後2時から4時ころの時間をさす言葉で、時間であり体験です。snaq.meが提供するのはお菓子ではなく「おやつ」、モノではなく「体験」です。だからこそ「体験」を重視し続けていきたいと思っています。そのためにお客様の声を聞き続けていきます。


※本記事は顧客時間とトレジャーデータ(https://www.treasuredata.co.jp/)が共同で主催した「PLAZMA D2C(2020年12月開催)のセッション『「お菓子」を「おやつ体験」へ昇華させるsnaq.meのこれまでとこれから。』をもとに編集しました。

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