日本弁理士会の知的財産講座 -種苗法の改正・地理的表示制度・知財ミックス-【PR】
知財ミックス
戦略的活用で模倣品排除へ
知財ミックスとは、複数の知的財産権(知財)によって商品やサービスを多面的に保護することである。農林水産・食品分野と関連が深い知財としては、前回までに解説した種苗法(育成者権)、地理的表示(GI)のほか、商標、地域団体商標、意匠、特許、実用新案、不正競争防止法による保護などが挙げられる。知財ミックス戦略を検討する理由は、知財の性質がおのおの異なっているため、組み合わせることによって補完的、場合によっては相乗的な効果が期待できるためだ。
知財ミックス戦略がうまくいった例として、イタリアのスパークリングワイン・プロセッコを紹介する。
プロセッコは、シャンパンより手頃な価格で味も良く、世界中で人気であり、2013年には王者シャンパンの出荷量を抜いた。人気となる過程でプロセッコは模倣品に悩まされたが、プロセッコ生産者団体は、2009年に国際ワイン・ブドウ機構(OIV)における原料ブドウの登録品種名をプロセッコ種からグレーラ種と変更し、原料として「プロセッコ」と表示する抜け道をふさいだ。
また、同年にイタリアのGI制度に当たる原産地呼称制度の最上位格付であるDOCGに昇格し、周辺地域が新たに次位の格付であるDOC認証を取得して高まる需要に応えた。DOC/DOCGには生産地域のほか、ブドウ品種の使用割合などの製造方法に関する項目も定められており、一定の特性は担保され、違反者への対応も可能だ。
さらに、世界各国で販売促進活動を行う傍らで商標登録も行っている。
2017年にはスペインの大手メーカーであるフレシネ社がイタリアのプロセッコ生産地域にわざわざ進出してプロセッコを製造している。大人気のプロセッコを製造販売するにはほかに方法がないためだろう。プロセッコでは、拡大路線を取りつつ市場を監視して模倣品や粗悪品を排除する活動がうまくなされているように見受けられる。
農林水産分野において海外進出はもはや身近であり、また、自ら海外進出をしなくても知らない間に海外で模倣されることも考えられる。知財ミックス戦略の立案および実行には、保護対象や申請者の状況など複数の要素が絡み、お仕着せではなく個々に戦略を立てることが必要だ。また、海外での知財保護を検討する場合には、国ごとに異なる制度や国家間の協定や条約を考慮しなければならないため一層複雑化する。
日本弁理士会では農林水産分野に特化した専用Webサイトを新たに開設し、同サイト内に「無料相談窓口」を設置した。知財の専門家である弁理士が無料で農林水産分野における知財について相談を受け付けている。
▽農水知財特設Webサイト
(https://www.jpaa.or.jp/nousui-ip/)
(日本弁理士会農林水産知財対応委員会・中川彰子委員)
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