
食料・農業・農村基本法(農業基本法)の概要
- 農業政策の基本的な方向を示すものとして、1999年に制定・施行された法律。農政の憲法ともいわれる。通称・農業基本法※。
- 当初から食料自給率の向上と担い手の確保・育成を柱とする農業の持続的発展を基本理念に掲げている。
- 政府は同法を根拠に農業基本計画の策定・実行ならびに周辺農業関連法の整備・運用を行っている。
2つの農業基本法
現・農業基本法は99年に廃止された旧・農業基本法の後継法。旧法が貧困化する就農者の所得改善を主たる目的にしていたのに対し、現法は90年代の農産物貿易自由化による低自給率化への対応に重きが置かれた。
2024年の改正骨子
- 2024年、施行から四半世紀を経て初めての大幅改正が実施された(5月29日成立、6月5日公布・施行)。
- 改正のポイントは、「食料安全保障の確保」を基本理念の中心に位置づけ、その定義を「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態」と定めたことである。
- また、従前は同法の対象範囲を一次生産者に限定していたのに対し、改正法では食品メーカー・卸・小売を含むサプライチェーン全層を対象とし、食料安全保障の実現に欠かせない持続可能な産業基盤の確立を目指すものとなっている。
- 日本政府がサプライチェーン全層を包含する食品産業政策のあり方を法制化したのは初めて。
2024年改正前後の基本理念の比較
改正前
- 食料の安定供給の確保
- 農業の有する多面的機能の発揮
- 農業の持続的な発展
- 農村の振興
改正後
- 食料安全保障の確保
- 環境と調和のとれた食料システムの確立
- 農業の有する多面的機能の発揮
- 農業の持続的な発展
- 農村の振興
昨年、農業基本法が25年ぶりに改正され、第1次産業からメーカー・流通までのバリューチェーン化を推進する法律に生まれ変わった。食に関わるすべての事業者はこの法律の意義を認識し、どのように関与し、貢献できるかを前向きに考えるべきだ。そのことが個社の成長と経済の好循環につながる。 (日本食糧新聞2025年元旦号トップインタビュー抜粋)