
政府の食料安全保障問題に対する視座と対応方向
1 世界人口の増加、新興国の食料需要の増大、地球温暖化による収量減、地政学的リスクの拡大などを背景に、世界の食料需給バランスは悪化の方向にある。

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海外に食料の過半を依存する日本は、今後、国民の生活に必要な食料を調達できなくなる恐れがある。


3 この状況を打開するには、海外での産地開発や技術供与を通じて安定的な食料輸入に努めつつ、国内の食料生産力を高めていくことが肝要である。

4 しかし、国内では人口減少と人手不足が加速しており、このまま放置すれば食料生産力は確実に低下の一途をたどる。

5 限られた労働力で食料生産・供給力を高めていくためには、生産性の向上が欠かせない。

6 農地の集約、法人の農業参画、スマート農業の促進、食品製造・流通の合理化などに国全体で取り組み、持続的な食料システムを確立させる必要がある。

7 こうして少人数で回せる生産・流通環境を確立できたとしても、各事業者がコストに見合う対価を得られなければ、産業全体の疲弊が進んでしまう。生産性の向上と並行して、持続的な供給に要する費用を考慮した合理的な価格形成を実現していかなければならない。

8 また、労働人口と同様に消費人口も減少に向かっており、国内生産力の増強によって供給過剰という別の問題が生じる恐れもある。このため、販路を海外に求めていく活動が今まで以上に重要になる。

9 加えて異常気象や政治情勢変化による突発的な輸入途絶なども想定される状況であり、不測時の対応を定めておかねばならない。

10 さらに地方スーパーの撤退や高齢化、貧困・格差の広がりによる食料品アクセスの低下に対しても、食料安全保障の観点から対策が必要である。