世界最大の生産国 アメリカン・チーズを探る(5)【PR】

米国は世界最大のチーズ生産国であり、これまでの連載でモントレージャック、コルビージャック、ペッパージャック、クリームチーズといった代表的なチーズの特性について見てきた。素材を生かして、新たな価値を加えるそれらのラインアップは、食の嗜好(しこう)が変化する時代に合ったチーズとして、今後も展開が期待される。ただし、同国には国の成り立ちと同様、まだまだ多彩な顔ぶれのチーズがあり、調理用途や食べ方の広がりは日本でもますます浸透していきそうだ。アメリカン・チーズの調理面・栄養面での特徴とこれからの展望について、服部学園服部栄養料理研究会の服部津貴子会長に聞いた。

服部学園服部栄養料理研究会 服部津貴子会長

服部学園服部栄養料理研究会 服部津貴子会長

チーズ 多彩な顔ぶれ、広がる用途 変化する時代に期待

─ アメリカン・チーズの特徴については。

服部 米国は多くの移民によって築かれてきた国。欧州各地域で作られていたチーズの伝統を生かし、発展させてきたことから、多種多様な種類がある。イングランド系のチェダーやイタリア系のモッツァレラ、カマンベールやパルメザンなど幅広いナチュラルチーズが生産されている。プロセスチーズも多く作られており、世界最大の生産国だ。

─ チーズの栄養面での強みは。

服部 ナチュラルチーズは生きた酵素が入っており、乳酸菌を多く含む。フランス料理では、チーズはデザートの前に食べられるが、これはチーズの乳酸菌が腸内細菌を増やして消化をよくするからだ。

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」でカルシウムの推奨量がアップしたが、今の日本人に最も足りていない栄養素。骨粗しょう症になる人も世界で最も多いことから、カルシウム摂取は喫緊の課題だ。その点、チーズはカルシウムを多く含んでいる。

また、乳酸菌のはたらきは肌や皮膚の美容、ダイエットにも効果を発揮することも期待されるので、毎日の食事に一口取り入れると良い。

─ 現在、服部学園で取り組んでいるチーズに関する教育は。

服部 アメリカ乳製品輸出協会(USDEC)の認定プログラムを実施しており、多くの学生が受講している。6週間かけて米国産チーズの種類や作り方などを多面的に学び、実際の味の違いなども体験することで、スペシャリストを養成するものだ。プログラム内容もとても密度が濃く、来年にはさらに中級・上級レベルのプログラムもスタートする予定だ。いずれは「野菜ソムリエ」や「日本酒鑑定士」のようなチーズの専門家の証しとして浸透されることを期待したい。

─ 調理する面でのポイントは。

服部 欧州系のナチュラルチーズと比べてクセがなく、素材をうまく生かせる。モントレージャックをはじめ、ピリ辛のペッパージャック、ほかに例を見ない見た目のコルビージャックの「三兄弟」は、いろいろな料理に使える汎用(はんよう)性が高い。

認定プログラムの一環でアメリカン・チーズを使った料理コンテストを実施しているが、毎回、西洋料理・中華料理・和食・パン・菓子など、今まで想像できなかった料理が提案されている。

─ 日本市場での展開可能性については。

服部 料理を取り巻く時代環境は変わっている。使い勝手の良いリーズナブルな価格で、多様な種類をそろえ、さまざまな調理用途に応用が利くアメリカン・チーズは、これからますます浸透が進んでいくと予想される。

調理を専門的に学んだ生徒は、卒業してからも学校で学んだ食材や素材をこだわって使う。本校で実施しているUSDECの認定プログラムのようにしっかりとインプットする機会を設けることで、さらなる普及力が高まるのではないか。

若い世代でもチーズは食生活の中でも取り入れやすく、人気の食材となっている。時代が変化していく中で、食を提供する側も対応が必要。安定的な供給と品質を維持するアメリカン・チーズは、これからもさまざまな形で広まっていくことが期待される。