世界のアマニから1 フランス篇【PR】

人生にとって健康は目的ではない。しかし、最初の条件なのである。

(武者小路実篤 1885~1976)

新型コロナ禍で健康の大切さを痛感するいま、
健康で生きていくには、どうすればいいのか。
各地で伝承されてきた≪伝統食≫に注目すると、
様々な困難を乗り越えてきた先人の〝知恵〟が入っていることに気づきます。
その1つが、紀元前400年ごろに食べ始められた、亜麻の種子<アマニ>です。
ギリシャの医学の父・ヒポクラテスが「腹痛に良い」とし、
9世紀には、フランク国王・カール大帝(シャルルマーニュ)がアマニの効用を評価。
「臣民は、アマニをとるべし」と亜麻の栽培と備蓄を法令で義務づけた歴史もあります。
そこで、当連載では、このアマニを活用した、世界の食をご紹介します。
読者のみなさまが、健康に生きていく〝ヒント〟に出会えることを願い、連載を始めます。

旅をした時。
国の内外に関わらず、私は必ず地元のスーパーマーケットに立ち寄ります。
例えば、大阪では、“粉もん”にかけるソースの種類が豊富ですし、
福井県では、専門コーナーで「油揚げ(厚揚げ)」が約30種類も並んでいます。
地元のスーパーには、その土地の豊かな歴史が見えてくるから不思議です。

さて、数年前。
フランスを旅行した時も、地元のスーパーに立ち寄りました。
驚いたのが、乳製品のバリエーションの豊富さです。
日本ではなかなか見かけない、ヤギやヒツジのミルクを使ったヨーグルト。
とはいえ、これは、ヨーグルトなのか、生クリームなのか。
食事用なのか、デザートで食べるのか…。おそらく100種類はあったでしょう。
気づけば、売り場に1時間滞在し、
あれもこれも食べてみたい、とホテルに持ち帰ったことを覚えています。

フランスといえば、「食の都」「ファッションの都」のイメージが強いですが
ヨーロッパにおける、屈指の酪農大国。その象徴が、まさに前述の乳製品なのです。
フランスの酪農を支えるのが、北西部・ノルマンディー地方。
首都パリから直行バスで4時間ほど。
満潮時、海に浮かんだように見える神秘的な修道院「モン・サン・ミッシェル」が有名です。
国の統計によりますと、酪農製品の4分の1が
このノルマンディー地方で生産されています。

特に盛んなのが、海沿いのエリアです。
飼育されているのは、土地固有の牛「ノルマン種」ですが、
温暖な気温の中で、1年の大半を放牧されながらストレスなく、のんびり育ちます。
その時、食べるのは、海風を受けて育った牧草です。
内陸部の牧草より塩分が多く、天然のミネラル成分もいっぱい。
このため、世界的に一般的に飼育されている「ホルスタイン種」と比べ、
高脂肪、高たんぱく質のミルクになるといわれています。
この豊かなミルクを使った、様々な乳製品がノルマンディー地方で作られ、
各地へ届けられています。

さて、乳製品と言えば、
「チーズ」と並び、
「ヨーグルト」を思いつく方も多いと思いますが、
フランスでは少し違います。

最もポピュラーな乳製品は、「クレーム・フレッシュ」。
濃厚で滑らか、爽やかな酸味が特徴のサワークリームの一種で、
いわゆるヨーグルトとは異なります。

フランス在住の友人によりますと、そのままでももちろん食べますが、
魚と肉に合わせてワインのおつまみにしたり、
あるいはフルーツと合わせてデザートにして楽しんだりと、
大人向け、子ども向け、使い勝手が良い一品なんだそうです。

その友人が定番料理の1つとして教えてくれたのが
サーモンに、クレーム・フレッシュを和えたサラダです。
作り方は実に簡単。
サーモンとクレーム・フレッシュに、旬の野菜、好きな野菜を混ぜるだけ。

そして、仕上げにかける一つが「アマニ粒」です。
フランスでは「フラックスシード」と呼ばれ、
日本で言うと、調味料コーナーに胡椒などと並んでいる感覚です。
友人いわく
「サーモンのクレーム・フレッシュのサラダは、
ついワインが進んでしまうので、
健康のために、アマニ粒を入れている」と笑顔をみせます。

アマニ粒に含まれるアマニリグナンには、
肝機能の働きを助ける、というデータもあり、
発酵食品の乳製品が作り出す酵素に
アマニに含まれるオメガ3脂肪酸や食物繊維が
腸内環境を整えるのに一役買うことにつながっています。

「健康ではいたいけど、
その前提はあくまで、おいしい料理であること。
あとはワインに合うこと。これは絶対だね」と笑顔で語る友人。
これがフランス流“長寿”の秘訣のようです。

平岡直也(ひらおか・なおや)

新聞記者、出版社、放送局を経て、2020年4月「株式会社hasso.」を立ち上げる。企業や大学、地方自治体に「はっ、そう!」と思ってもらえるPR戦略を立案するほか、これまでの経験を活かし、フリージャーナリストとしても活動。池上彰氏と「池上彰と考える『死』とはなんだろう」(KADOKAWA)も上梓した。趣味は、「食べること」。仕事や取材で行った土地の料理と、“温泉”を必ず楽しむのがモットー。