国産干瓢の供給量不足で高値続く 安価な中国産の輸入量も減少
国産の干瓢(かんぴょう)の高値が続いている。国内生産のほぼ100%を担う栃木県産の2019年度実績は前年に比べ微増となったものの、高品質の国産干瓢を求める一部のニーズを賄うには、供給の絶対量が不足している状況だ。一方で市場の中心を占める安価な中国産の輸入量も減少へ転じるなど、消費の拡大へ新たな手を打つことが業界の最重要課題となっている。
栃木県産干瓢は国内生産量の約98%を占めるとされ、2019年生産量は前年比3トン増の260トンで着地した。1980年からの約40年間で15分の1に減少している。作付面積は5ヘクタール減の107.8ヘクタール、生産戸数は16戸減の269戸となり、生産基盤の弱体化が長期的に続く。今年は例年より遅い梅雨明けとなったが昨年にも勝る猛暑となり、生産量は例年並みだった。
国産の原料相場は、ここ3年ほど価格が高騰し、オイルショック時につけた最高値に迫る水準が続く。今年は若干価格が下がったものの、以前の水準には戻っていない。「これ以上高値が続くと、消費は細る一方」(産地問屋)と懸念の声が上がる。国産価格は中国産のおよそ2倍、国内流通量はしばらく国産1対中国産9だったが、今では国産が1割を切っている。
中国産は今年、主要産地の黒竜江省で生産量が半減。ただ、各社在庫を多く持っているため、供給に影響はなさそうだ。輸入量は年々減少しており、5年前と比べて3割減、10年前の半分以下になっている。ただ、現地で加工された味付け干瓢は統計に含まれておらず、加工品の輸入は増えていると推測される。
産地問屋で構成される栃木県干瓢商業協同組合は、生産振興と消費拡大を2本柱に活動し、特に近年は消費拡大に力を入れる。組合主催の「栃木のかんぴょう祭り」ではレシピコンテストを開催。試食販売では地元の高校生が考案した、干瓢を使ったギョウザやコロッケなどが人気となっている。
同組合の伊澤茂理事長(伊沢商店社長)は「若者の発想は面白い。各地で開催されるさまざまなイベントにも積極的に参加し、干瓢の価値を伝えていきたい」と話す。
干瓢は食物繊維やカルシウム豊富・低カロリーなど、健康志向にも対応した商材。問題は昨今の時短ニーズや家庭内調理機会の減少で水戻しの手間が敬遠され、消費が全般に長期停滞を続けていることだ。
このため栃木県ではメーカーが干瓢を原料に使った麺や菓子などの加工品で簡便・機能性を訴求したり、最大生産量を誇る下野市が消費拡大支援事業を実施するなど、特産品の振興を図るべく試みを続けている。
消費の拡大が容易に進まない現状とはいえ、干瓢は流通にとって収益性が高く、提案次第では販促企画や売場の差別化に寄与するメリットもある。大手卸の日本アクセスは今期から乾物・乾麺メーカーで組織する「AK研」を発足し、伝統食の乾物を軸に差別化のマーチャンダイジングへ注力するスタンスを強力に打ち出した。
この中で、干瓢を使った簡便メニューなどの提案も有力小売チェーン向けに行っていく。大手流通の取組みを通じて全国規模で店頭露出が広がれば、干瓢の需要喚起へ新たな展開も期待できそうだ。