卸がデジタル販促で連携 店舗の集客・拡売を支援

卸・商社 ニュース 2020.11.25 12150号 01面
SM店舗での「RSP」の実例。集客した顧客に電子看板でレシピ動画を訴求し、生鮮や関連商材の買い上げ点数アップを狙う

SM店舗での「RSP」の実例。集客した顧客に電子看板でレシピ動画を訴求し、生鮮や関連商材の買い上げ点数アップを狙う

 伊藤忠食品や旭食品、ヤマエ久野などの有力卸が連携し、全国の小売業へデジタル活用型のリテールサポート(RS)提案へ乗り出す。店舗への送客・集客機能から店頭でのデジタルサイネージ(電子看板)販促による実売獲得、販売情報フィードバックまで一連の仕組みを小売業へ提供し、売上げ拡大を支援する試み。5GやIoTの普及で動画活用型のインストアメディアが注目を集めていることに加え、小売業は新型コロナウイルスの影響などで店頭販促の無人化・非接触型を模索する動きが強まっている。商圏の重複しない卸同士の連携で顧客ニーズをとらえたRSを提案し、各エリアで店舗の競争力を支援する構えだ。(篠田博一)

 ●エブリー、動画メディアで「RSP」活用

 卸各社が連携して小売業へ提案するのは、国内最大級のレシピ動画メディア「デリッシュキッチン」の運営会社・エブリー(東京都港区)が開発した「リテールサポートプログラム(RSP)」。

 「デリッシュキッチン」は管理栄養士が作成した約3万種類のメニューを揃え、1分間で作り方を学べる動画メディアとして人気が上昇。20~40代の女性層を中心に約2500万人の登録ユーザーを持つ。同社はこの強力な動画コンテンツを軸に、18年から小売業の集客力アップや売場活性化を軸としたRSPの提供を始めた。

 RSPの導入小売業は「デリッシュキッチン」の約3万点のレシピの中から、その日に売りたいメニューを選び、関連商品の電子チラシ・特売情報を登録ユーザーへ送信。家庭に届ける折り込みチラシの特売商品にもレシピ動画の2次元コードを付与するなど、オンライン・オフラインの両面で集客策を展開できるのが特徴だ。

 ユーザーを店舗誘引後は売場と連動したレシピ動画や広告の放映で購買意欲を刺激し、そのメニューを作るために必要な生鮮品や調味料など関連商材の買い上げ点数アップへつなげる。

 生活者は「デリッシュキッチン」を通じて献立の選定や調理法を学べる上、生活圏にある小売業の特売情報をタイムリーに入手できるなど、利便性が高い。このため「近隣の3~4ヵ所を買い回る生活者を自社の店舗につなぎ止め、ロイヤルカスタマー化できる」(エブリー)効果が見込め、SMを中心に各小売業へ導入を広げている。

 19年にエブリーと伊藤忠食品が相互の経営資源融合へ資本・業務提携したのを機に、各エリアの有力卸と連携したRSPの展開を加速。先行して顧客提案に努める伊藤忠食品が導入事例やノウハウを各卸と共有する格好で協業を進め、現在、中四国エリアに強い旭食品、九州エリアのヤマエ久野ほか、東北の丸大堀内、北陸のカナカンなどの有力食品卸が得意先へRSPの提案を始めた。

 新型コロナ影響による店内での調理実演の中止や労働力不足への対応、若い世代に支持される店作りなどを背景に、小売業がデジタル活用による競争力強化を模索する中、卸の提案力が問われる局面だ。デジタル領域の機能構築に後れを取る地域卸にとってもRSPによる顧客支援は有効であり、資本関係をもたない卸同士が集客・販促分野で連携して動くのは新たな試みといえるだろう。

 今後、RSPはユーザーのレシピ動画の視聴履歴の活用や顧客ID連携による新たなサービスやネットスーパーアプリの開発など機能をさらに強化し、サービスの導入拡大を図っていく。

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