小川の庄おやき村、高齢者雇用で所得向上 「縄文おやき」が一助

総合 ニュース 2019.10.18 11957号 07面
焙烙(ほうろく)でこんがり焼き色を付け、囲炉裏の遠火でじっくり中まで火を通す

焙烙(ほうろく)でこんがり焼き色を付け、囲炉裏の遠火でじっくり中まで火を通す

おやき体験の「縄文おやき」はおいしさ格別

おやき体験の「縄文おやき」はおいしさ格別

日本は少子高齢化、人口減による急激な人手不足が喫緊の課題となっている。政府は高齢者雇用支援を進めているが、いち早く地域の“おばあちゃん”のものづくりの知恵と手腕に着目したのが信州小川村だ。伝統の郷土食「おやき」の商品化を進め、地域の高齢者雇用と所得向上を実現。雄大な北アルプスの眺望を望む自然を堪能できる観光と食の連携で、「縄文おやき」を一大ブランドに成長させた。

日本全国、海外からも観光客が訪れる「小川の庄 おやき村」は長野駅から約30分の山間部にある。縄文時代の住居を模した竪穴式住居で“おじいちゃん”や“おばあちゃん”がいろりと焙烙(ほうろく)で、滋味豊かでおいしい「縄文おやき」を焼いてくれる。おやき体験(2個540円)も人気。

おやきは傾斜地でコメが取れなかったこの地域の日常食。野菜や山菜を油で炒め、味噌や醤油で味をつけ、小麦粉を練って包み、いろりでこんがりと焼いた。具には野沢菜や丸ナス、カボチャなど地域で生産される野菜、ノビルなどの山菜やキノコが好んで使われてきた。「縄文おやき」は季節商品も含め20種類以上。工房は2ヵ所あり一つは蒸し専門工場で、冷凍タイプは1日当たり5000~1万個を製造する。通販、生協、家庭用の販路を持ち、食品展や商談会に出展し、新たな取引先を獲得している。

おやき村は60歳入社で定年なし。従業員約80人中、半数が65歳以上。こうした高齢者雇用の仕組みを学ぶために、日本全国の自治体が視察で訪れている。

小川の庄は地域の若者たちの村づくりへの情熱から始まった。仲間7人が村の協力を取り付け、農協、食品加工会社、住民が共同出資する第三セクター方式による新しい村づくり事業として「小川の庄」を1986年に設立した。

地域に縄文時代中期の大遺跡があり、土器が大量出土。縄文人が土器を使って木の実、草の実や初期的な農耕による穀類で粉をつくり食糧を得たと推測される。(山田由紀子)

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