辛口・外食にモノ申す:「和民」ジリ貧の既存店

2002.09.02 259号 23面

衝撃的なニュースが飛び込んできた。居酒屋「和民」が売上げの減少に歯止めがかからず、既存店が大幅に売上げを落としているというのである。

平成14年7月18日の日経MJ(旧日経流通新聞)15面の囲み記事によると、〈一九九二年の初出店以降、フードメニューの充実や接客サービスの強化を軸に新たな居酒屋像を打ち立てた「和民」がここに来て転機を迎えている。客数の減少傾向に歯止めがかからず、既存店売上高は一五ヵ月連続で減少。(中略)「和民」の6月の既存店売上げは前年比一七・七%減。6月はサッカーのワールドカップという特殊要因があったものの、1~5月も平均八・四%の減少が続いている。(中下略)一〇年前に業界に新風を巻き起こした和民だが、気がつけば周りにはメニューや価格、店づくりまでほぼ変わらない店も多くなった。店舗で使用する野菜を有機野菜に切り替えるなど、商品力の強化を進めるが、以前の集客力をどこまで取り戻せるかは不明。(以下略)〉。

「和民」の株価がじりじりと低落している。その原因が、既存店前年売上げのジリ貧だった。なぜ、既存店売上げが落ち込んでいるのか? 現場に行ってみると、余りにも明白である。「和民」は、まるで流行遅れのダサい居酒屋に成り下がってしまった。

まず、内装がダサい。今流行の居酒屋は、全体的に暗めで、個室感覚の落ち着いた雰囲気が好まれる。その点で、「和民」は明るすぎる。明朗すぎる。まるで和風ファミレスのように、整然とした空間形成がなされている。

ユニフォームもダサい。全くオシャレではない。メニューは金がかかっているようだが、時流ではない。アメリカン・ファミレス風、ダイナミック写真多用型メニューブックである。ここまでダサいと、金のない中年サラリーマンには大歓迎だが、若者たちは離れていく。なぜこうなったのか?

客が居酒屋に求めるものなど、たかが知れている。厳しい現実から逃れ、ほっと一息つける場所が欲しい、それが酒を飲みながら、上司の悪口、友達のうわさ話をする場所、居酒屋なのである。

渡辺美樹氏は、飲食業界の大成功者だ。しかし、過去の成功体験に酔いしれ、時流を見る目、消費者の気まぐれな本質を見る目を完全に失っている。一流企業だろうが何だろうが、しょせんは居酒屋、未来ビジネスでも何でもない。酒を飲んで憂さ晴らしする、消費者の本当のニーズに早く立ち帰るべきではなかろうか。

((有)日本フードサービスブレイン代表取締役・高桑隆)

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