惣菜弁当の殿堂(5)柿安本店 柿安ダイニング「大海老マヨ」 15年間人気不動
○見栄えを演出する指先調理テクニック 惣菜の奥深さを物語れる逸品
全国約80店舗の惣菜店を展開する柿安本店の業態の一つ、「柿安ダイニング」(43店舗)の看板惣菜は、発売から15年間、不動の人気を誇る「大海老マヨ」だ。早い話、ブラックタイガーのフリッターをマヨネーズで調味した料理だが、改廃著しい約40商品の中で、売上構成比はサラダ惣菜ではトップの3%。平均日販12~20kgを誇り、ピーク時は日販60kgに達した店もあるほど。しかも100g/693円の高単価だから驚異だ。突出した商品力は、絶えず進化してきた調理ノウハウと、見た目のおいしさを演出する指先調理テクニックにある。「惣菜の奥深さを物語れる逸品」(興十郎総料理長)という超繁盛の裏側とは?
●商品発祥:本物に感動し惣菜向けに改良
誕生は1998年。興十郎総料理長が中国料理の「エビマヨネーズ炒め」をヒントに考案した。当時、すでに「エビマヨ」として商品化されていたが、芝エビ(むき身)のフリッターをマヨネーズで調味した創作調理で、注力商品ではなかった。だが、それでも人気だったので、当時社長であった、赤塚保現名誉会長が「本物を食べて勉強しよう」と興総料理長を誘い、2人で東京・恵比寿の中国料理店を訪れた。
興料理長は「私は洋食出身なので、中国料理店のエビマヨを全然知りませんでした。本物を食べて大感動。香り、食感、見た目のおいしさの良さを参考に改良すれば、もっと売れると確信しました」と振り返る。
そして、中国料理店とは異なる、惣菜版に進化させた大海老マヨが完成した。
●調理概要:手間が正直に反映される商品
1回の調理に使うエビは約100尾。完成重量は約6kg。調理方法は次の通り。
(1)エビ(ブラックタイガー)むき身、塩、卵を合わせ、手でもみ、水で洗う(これにより“プリッ”とした食感が際立つ)。(2)エビの身だけにバッターを付け、1尾ずつ丁寧に揚げる。(3)ブラストチラーで冷却する。(4)特製マヨネーズソースを手に取り、指先で1尾ずつエビにつける。(5)皿に盛り、ピンクペッパー、ミモザ(卵黄裏ごし)、オレンジをトッピングする。
興総料理長は「調理ポイントは、すべて1尾ずつ、丁寧に手作りすること。シンプルゆえ『手間=品質』が正直に表れます」と言う。
●販売実績:アジアの街、新宿伊勢丹で大ブレーク
店舗の規模により異なるが、平均日販12~20kg。常時40品以上がラインアップし、「売上構成比3%で大ヒット」と評価される中、構成比3%の売上げを通年キープしている。100g/693円の価格も発売当初から同じ。
過去最高売上げは、約10年前に記録した新宿・伊勢丹本店の柿安ダイニングで日販80kg。その大ブレークで知名度が飛躍的にアップし、全店に波及した。
興総料理長は「新宿区はアジア系の人が多い土地柄ということもあり、中華やエスニックが好まれる傾向があるようです。そうした環境もヒットに影響したのでは」と推測している。
●ポイント:エビの尻尾を折る 指先で丁寧にあえる
エビの尻尾にはバッターを付けず、尻尾の赤色が目立つように揚げること。そして、カリッと揚がった尻尾の根元の片側を指先で折って、折り目に片側の尻尾をねじり込む。すると尻尾が左右に美しく開き、盛り付けの見栄えが格別にアップする。
また、必ず手と指を使って特製マヨネーズソースをつけること。手にマヨネーズを取ると、手の温度でマヨネーズの粘度が軟らかくなり、衣になじみやすくなる。それを指先でエビ1尾ずつ、丁寧につけることで、衣とマヨネーズの絶妙なバランスが演出されるという。
興総料理長は「ほんの少しずつですが、15年間、絶えずノウハウを積み重ねてきました。今後も同じように少しずつ進化するでしょう。それが定番惣菜の奥深さだと思います」と言う。
◆食材の決め手
使用食材:特製マヨネーズソースとバッター 柿安オリジナルの配合
1尾ずつ丁寧につけられた大海老マヨの特製マヨネーズソースは、エビのうま味を生かすための、マヨネーズと数種の調味料を合わせた柿安オリジナルのソース。また、フワフワとした衣の食感が楽しめるように、バッターには工夫を凝らしている。
●会社概要柿安ダイニング(株)柿安本店
本社所在地=三重県桑名市吉之丸8番地/事業内容=今年で創業141年を迎えた老舗「柿安本店」を母体に精肉、惣菜、レストラン、和菓子、食品卸を手掛ける。基幹事業の一つ惣菜事業として「柿安ダイニング」は百貨店を中心に全国43店舗を展開。