で・き・る現場監督:マンジャペッシェマネジャー・久保木博さん
トラットリア・リストランテ(シンプルメニューをリストランテで食べる)の位置で、イタリアの味を提供している。「マンジャペッシェ」とは「お魚を召し上がれ」という意味。店内のショーケースに、その日全国から届いた魚が陳列される。
魚は丸ごと調理するのが基本。カマや頭から出るうまみも残さず食べられる。上がった料理をカメリエレ(給仕)が席でさばいたり、取り分けるというパフォーマンスも目に訴えるおいしさといえる。
「イタリアの味に忠実というよりは、素材に忠実なのがこの店の特徴です。それには、仕入れも相当気を使っていますが、自分たちのもつネットワークをフルに活用して全国から仕入れています」
「昨日のメニューに『ホワイトアスパラガスの温泉卵添え』というのがあったんですが、本当、シンプルにアスパラをゆでて温泉卵を添えただけのものなんです。でも、これは素材の一番いい時期を極めて仕入れているんですから、本物の味なんです」
「これにカメリエレが一番おいしいタイミングでお客さんの前で、最後の調理を施して取り分ける付加価値をつけて出しています。それは『こんな風に食べてみて』と積極的にお客さんへ投げかけている接客でもあるんです」と久保木マネジャー。
はじめは調理場にいた久保木さんだが、次第にテーブルサイドサービスやマネージメントといったものに興味をもちはじめ、アメリカのイタリアンレストランでマネジャーとして四年間仕事をする。帰国後、マンジャペッシェのマネジャーとなり、カメリエレの教育をはじめ、店づくりに従事してきた。
「スタッフにはインテリジェンスな(自分の意志がある)インフォメーションを、と言っています。人から受け売りの接客ではなくて、『~がおすすめです』という姿勢で、何事にも自分がお客になることを考えて対応すると『ありがとう』と言われます。その言葉が今度は自分たちの励みになっていきます。ありがとうと言われるサービスをしていくことが、この店の接客の基本でもあるんです」
赤ワインを飲んでいる客にスッと差し出す一杯の水、そんなサービスを受けてムッとする客はいないはず。カメリエレだけにまかせるのではなく、久保木さん自身も店全体を四六時中ながめ、客の表情をみつめる。気が付いたことは担当者に指示を出している。
「カメリエレはお客さんの席で魚をさばいたりも、取り分けたりもします。でも、オープンしたての三年前にはここまではできませんでした」と振り返る。三年かけてじっくりと、イメージ訓練をしながらスタッフを育ててきた。厨房とホールの一体感も、この給仕のスタイルによって生まれている。
今後も自分たちのスタイルを追求し、「だれでも楽しめる日本にあるイタリアのレストラン」づくりにまい進する。
◆くぼき・ひろし(マンジャペッシェマネジャー)=写真中央=昭和35年生まれの三八歳。東京都出身。料理の世界へは厨房から入った。サービスやマネージメントに興味を持ちはじめたころ、アメリカのイタリア料理店でマネジャーを任される。帰国後、以前厨房で一緒だった日高良実シェフとともにマンジャペッシェをオープンさせる。始めたばかりの家庭菜園では、小松菜、ナス、チャイブ、トマト、ラディッシュなどを無農薬で育てる。
◆(有)エムワイ/代表取締役=高柳道治/創業=平成7年/本部所在地=東京都渋谷区千駄ヶ谷三‐五〇‐一一、明星ビル一階、Tel03・3403・7735
◆マンジャペッシェ/東京都渋谷区千駄ヶ谷三‐五〇‐一一、明星ビル一階、Tel03・3403・7735/店舗面積=八五坪・六〇席(ほかにテラス席二四席)/客層=二〇代~五〇代、女性が六割/客単価=昼二五〇〇円、夜一万円