廃食油カー、都大路を走る VDFで都市は資源の宝庫

1994.05.23 52号 21面

日本では年間二〇〇万tの食用油が使用され、その二〇%である四〇万tが廃食油となる。そのうち、業務用を中心に二〇万tが回収されている。用途はニワトリの飼料の原料、石けんなど。しかし養鶏業は先細り状態であること、安価な輸入飼料が出まわっていること、石けんはダブつきぎみなどで廃食油はもてあまされている。

環境問題では必ず悪玉の筆頭に挙げられる廃食油。その廃食油で車を走らせ、新たな用途開発として注目されているのは廃食油回収業の(有)染谷商店(東京都墨田区、03・3613・1616、染谷武男社長)である。廃食油を軽油に代替できる新燃料VDF(ベジタブル・ディーゼル・フューエル)にして車を走行させることに成功した。

アメリカでは化石燃料ではなく動植物から取り出した燃料をBDF(バイオ・ディーゼル・フューエル)と呼んでいるが、染谷社長が廃食油からの新燃料にあえてVDFと命名したのは純植物性が特徴だからである。

「VDFで廃食油をエネルギー資源として無限に利用できる用途を開発した。廃食油回収業界の全国組織・全国回収油脂連絡協議会(埼玉県越谷市、0489・76・1660)があり、全国どこへでも回収に出かける体制はできている。飲食店は安心して食用油を使用して欲しい。廃食油は18l缶で10缶ぐらいから一缶500円の手数料で回収している。回収業者と飲食店が協力すれば都市は油田になる」と染谷社長は語る。

軽油代替のVDFは廃油100に対して約95の割合で製造される。黒煙がディーゼル車の3分の1で、硫黄酸化物を含まず、大気汚染度がより少ない。1l60円で試用のVDFを分けてもいる。

「廃食油の回収業を45年やってきたところ、究極は緑にたどりついた。都市は緑が少なく、酸素を製造できない。しかし、廃棄物をエネルギーに替えて、酸素を作り緑を守ることはできる」と語り、廃食油にとどまらず、残飯も含め飲食業界に廃棄物の再利用を呼びかけている。

さらに「廃食油は対策があるからあまり大きな問題ではない」という。例えばホテルでは月に廃食油は10tだが、残飯は1日10tも出ると言われている。染谷社長は東京都に残飯を産業廃棄物にするよう働きかけている。残飯の再利用を考えると、分別したものを回収業者が集めてリサイクルする方法が最も早道という。

残飯は廃食油の30倍という市場規模。これをしっかり分別回収してリサイクルができたら都市は“資源の宝庫”となる。

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