人手不足解消法(18)現実的人材確保のノウハウ

1992.12.21 18号 18面

バブルがはじけて世間では人材確保が容易になったとか、人材派遣会社の経営が四苦八苦といった風聞がきこえてくる。

確かに不況の風が吹いて人余り現象がみられるようになって安心感のようなものがみえるが、果して外食産業でもその状態が期待出来るのだろうか。一部の経営が行き詰まった企業からの人材放出は見られても、力ある企業にあってはこのときとばかりに、出店政策を進めていることを忘れてはならない。

つまり次々に出店をし、他からの転入者を加えても人材確保が難しいのが現実である。昔から外食産業は慢性的な人材不足企業であると言われている。それは新規出店者が後を絶たず、加えて腰掛け的に職を選ぶ離職者と入職者が動いていることに原因がある。

そうであるならば、いかなる手段でそれを防ぐかということが重要な問題となってくる。

ある規模の年間の募集経費は直接経費のみをみても一億五千万円にも達している。しかも人が流動的であるということは、練度が常に上らないということになる。

平たくいえば店で働く人の大部分が素人ということになり、調理のより高い技術とか、質の良いサービスといった客の求めにはほど遠いことになる。それによって一般社会から槍玉に上げられるという結果にもなっている。

それを別の面からみると、俗にいう手に職(技術)をつけるという感覚が、働く本人にも雇用する経営者側にも稀有としかいいようがない。

新しい人を求める努力を、現在在職している人の定着に転換することを考えるべきである。

世界中、日本中がいつまでも不況のドン底に沈みこんだままでいるはずはない。再び好況に転じた時、生き残れる企業としての、人材確保が出来るように今こそその力をつけなければならない。そのために必要となってくるのが、各企業における教育訓練である。教育訓練といえば机を並べて勉強するといったことを考えがちだが、企業によって手法は違っても、従来のようなアルバイトやパートに依存し経営効率のみを追求した教育でなく、社員として定着しようとする人の将来を考えて納得出来る教育訓練が必要なのである。

教育訓練は、非生産部門でありながら金が要る部門で、利益を生み出さないという思いが上から下まで行きわたっている。しかしながら教育訓練は、定着の問題のみでなく、前述のように企業全体の質の向上につながっていることを忘れてはならない。

中小企業には国や県による法に定められた支援がある。それらの制度をどう利用し、いかに安い費用で教育訓練の実を上げるかということを考えるのは経営者の責務でもある。

残念ながら毎日の売上、利益のみを追っているならば、そこに働く人材も目の前の給与や待遇のみを追い求めることになるのは当然と言わざるを得ない。

勿論企業は利益の追求をしなければならない。しかしながら、現代は経営者のみがそれを考え、働く人間は言われたことだけをする時代ではない。

労使が協調して経営の成果を上げる時代であることを認識しなければならない。そのためには経営者のみでなく、労働する側も教育を受け、訓練のチャンスを得て、自己の向上に努めなければならないことは言うまでもない。経営者は自分の都合の良い理論や精神論、もしくは宗教感によって従業員を操るが如き行動は厳につつしむべきであり、真の教育訓練のあり方や方法を考えることが本当の意味の企業の発展につながることに思いを至すべきである。

弱少企業だからとか、反対に大企業だからといった狭い枠にとらわれず、大同団結しその調理やサービス、経営の技術が認められた時、人材の確保も容易になると思う。

それぞれの技術やサービスは何処へ行っても通用するものとしての教育が必要なのである。

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