そば・うどん特集 人気メニュー8選

1995.07.03 80号 20面

「せいろに始まりせいろに終わる」というそばだけに、メニューも絞り込み、「一つ一つに納得した味で出したい」という。

粉は北海道、茨城、栃木から取り寄せミックスして使う。「一ヵ所からでは、その年の味が悪いと全部ダメになる」からとか。

小麦粉をつなぎに二八そばが「あたりさわりがなく」、太さは、少し細めの18~20番が見た目、味わいとも東京ではふさわしいという。田舎では少し太めになる。

禅寺では、お替わり、音を立てて食べることが許されていたそばだが、人間の肺活量に合わせ八寸がいちばん食べ易い長さ。また、切り口は角が立っている方がうまさを感じさせるという。

つゆは、本節、醤油、砂糖、みりんを基本とし、昭和24年のオープン以来替えていない。

メニューに、「せいろ」(六〇〇円)、「天せいろ」(一八〇〇円)など、また「聖天」(八〇〇円)という塩味だけのつゆで食すそばもあり、「ズバリそばの味が出る」という、こだわりがうかがえる一品だ。

全長三五センチメートルもある天然エビを投じた「エビ天」が自慢。仕入れのやりくりが一番の悩み、というほどエビに気を使う。

見た目に似合わず甘みと歯ごたえが強い、この味に魅せられ、はるばる遠方からやって来る常連客が後を絶たない。

以前は普通のそば店を営んでいたが、忙しさのあまり味、サービスの追求に手をこまぬいていた。その宿願を叶えたのがいまの店舗だという。

エビへのこだわりもそうした思いの一つに過ぎない。そば店の基本はやはりそばといってはばからない。

自家栽培、自家製粉、手打ち、そば粉一〇〇%が基本姿勢。

作業場(厨房)が総店舗面積の三分の一も占める。朝4時から仕込むそばは、一五〇食分が限界だという。3時には売り切れ御免となる同店のそばを一度は味わっておきたいところだ。

明治25年創業というだけにお客のほとんどが固定客。

昼どきには近隣のサラリーマン、OLでいっぱいになる。

「黙っていてもかきあげ」(中田暉四代目当主)というほど店の看板として知られるのが「天ぷらそば」(九五〇円)だ。

アオヤギ小柱入りかきあげは、初代から続く名物品。たっぷりの小柱は魚河岸から仕入れる新鮮魚介。

「先代がいろいろ工夫をする人だった」ことから、一五年前から野菜をたっぷり盛り込んだ「サラダそば」(九五〇円)をメニュー化した。

今ではすっかり定着し、毎年5月連休明けごろから、女性客から「そろそろサラダそば始めないの」の声がかかるほどだ。

このメニューで女性客二割増になったという。

「そばの基本は“もり”」とするだけに、もりの変わりそばは一七種に及ぶ。

人気ナンバーワンは、もちろん「もりそば」(六〇〇円)。次が店の看板としてすっかり定着している「岩石そば」(一〇〇〇円)だ。

そばを油で揚げ、なめこのあんかけをしたもので、そのダイナミックスさが受けている。

「ほかと同じものは作りたくない」というほど反骨精神旺盛だが、お客の要望はキチンと取り込みメニュー化していく。

その一つが、七、八年前に開発し、人気メニューとなっている「焼肉そば」(一四〇〇円)である。

お客から「野菜少し入れて」とか、「マヨネーズを垂らして」とかの要望を聞くうち、いっそのこと全部まとめて乗せてしまおうという結果が、このメニュー。熱い焼き肉と冷たい野菜、そばとの取り合わせが新鮮だ。

そばの表面をキャンバスに見立て具材で描く‐‐。作品名は「風神」。見た目にもこだわりを見せる同店自慢の一品だ。

大根おろしが雲、いくらが大陽、あげもちが風神の風袋。そばを大地とし、その上の京ネギが野原、貝割れが畑、山菜が山、錦糸卵が光、を表現。「風神」の取り巻く環境をイメージしている。

一日に一五~二〇食出るこのメニューは、あれもこれもと欲張りな客層に人気だという。

従来の大衆的イメージを残しつつ外食の楽しさをアピールするメニュー開発が、今後のそば店には必要と説く。六〇〇円の「もりそば」からお任せの「そば懐石」までの幅広いアイテムすべてにその持論が根付いている。

代々伝わる老舗の“のれん”を守りながら、将来の“そば店像”を創造する同店の取り組みは必見だ。

「味噌のごちゃ煮うどんと御飯は付き物だった」という。故郷愛知県岡崎の味を看板に開店して一五年。

「かた麺田舎うどん」(九〇〇円)は一見して何の変哲もない味噌煮込みうどんだが、味噌は三河の八丁味噌を取り寄せ四種類を調合しており、醤油、粉すべても故郷から仕入れているほど、関西でも関東でもない独特の名古屋の味を打ち出してる。

朝6時の気象情報によりその日の粉、水、踏み加減を微妙に変えるといううどんは、煮込み用として硬めでかなりシコシロ感があるもの、かけうどん的に食べるうどんは、軟らかくてコシのあるものと、打ち分けている。

「独特のうどん味のため、最初は“うどんが生だ、辛い”という声もあった」が、三、四年前からやっと定着したという。味噌は故郷の味。味噌汁に通じるものがあるのか、男性客に人気のメニューだ。

その他ランチタイムに「ひるうどんセット」(かけうどん、ごはん、漬物、つくだ煮=七〇〇円)がある。

土・日に飲んだ人が好み、月曜日はコレに注文が集中するという。

カレーうどんは数あれど、カツカレーうどんにまで特化したケースは珍しい。厚さ一センチメートルはあろうかというカツは、日々じっくりと煮込んだカレーで覆われる。ボリューム感、目新しさで若者をつかみ、うどんの魅力を啓蒙する一環だという。

さまざまな素材、一品の味をうどんに託すのが同店の考え。そのためのメニュー開発は多岐にわたる。諸国名物をテーマにしたり、斬新なサラダうどんはつとに有名。うどんで素材、一品の輪を楽しめるバラエティーさが見物だ。

5月から9月までの夏季限定メニュー。暑い夏はキムチのピリッとした辛さが食欲を誘う。ごはんとのセットで、キムチをおかずにする客が多いとか。ドロッとした韓国風キムチだとうどんとつゆの味がぼやけるため、サッパリした和風キムチを乗せるのがポイントだ。ほかにもグランドメニューは八〇種あるが、夏場はこれだけでオーダー構成比の七~八%を占めるという。

同店のうどんはコシが売り物の讃岐風。太すぎず細すぎずをモットーに厚さ五ミリメートルの麺を毎日仕込む。塩味を残してコシを強めるゆで方に一番神経を尖がらせている。うどんへのそのこだわりにも注目したい。

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