話題の飲食施設 百人町屋台村(東京・新宿) アジアの飲食空間を8店に凝縮

1996.04.01 98号 16面

東京・新宿の百人町。JR山手線新大久保駅から二、三分。総武線大久保駅から二分。大久保通りを北側へ入ったところ。「百人町屋台村」(代表楊維佳さん)。平成5年5月のオープンで、やがて四年目を迎える。“屋台村”ブームの初期のころにできた店だが、この4月末で満三年、多くの屋台村が一過性の集客で経営不振に陥ったり、閉店したりという状況の中で、地域に根を下ろし生き残っている。店舗面積六五坪、収容人数五〇~六〇人。客席を囲む形で広東料理、上海料理、中国料理、東南アジア(タイ、ラオス、ベトナム)料理など八店を展開し、本場と変わらないプロの味を低価格で提供しているのが、客に大きく支持されている理由だ。客層は日本人のサラリーマン、女性客に加え、東南アジアなど外国人が主体。食べて飲んで客単価二〇〇〇円。日商六七万円(坪売上げ約一万円)、収益も十分確保しているということだ。

場所は大久保通りから狭い路地を二〇mほど入ったところ。大久保といえば、東南アジア系の外国人が多く来街し、また住んでいるところだ。

商店と住宅が混在する雑然とした街で、それだけにエネルギーの感じられる地域、ゴミゴミとした街ではあるが、東南アジア的に活気にあふれる街ということだ。

そこに中国・東南アジア料理の屋台村というのは最もお似合いの業態だ。

店舗は鉄骨平屋建てで、お世辞にもしゃれた店とはいえない。

泥臭さ、ザックバランさが“屋台ビジネス”の持ち味とすれば、造作の不恰好さはよしとしなければならないわけだ。

しかし、この店は造作のみかけは悪くても、料理の中身は本格的だ。料理は広東、上海、台湾、タイ、ラオス、ベトナムなど中国、東南アジア系の料理だが、すべてそれぞれの国、出身地のプロの料理人が作っており、味作りは街のレストランと変わりがない。

食材は魚介類、野菜ほか、とくに東南アジア系料理は香辛料を多用するが、スパイス類も本場から輸入している。

輸入は専門業者を介しておこなっているが、鮮度、質は日本の中国レストランなどで使うものと変わらないものだ。

「現地で使う食材、料理とほとんど変わらない。味付けも本場のまま。この店は日本ではなく中国、東南アジアと同じです。料理の内容も日本のチャイニーズレストランと変わらない。それで半分から七割の値段、おいしくて安い、大変に得するということ……」と屋台村の代表を務める楊維佳さん(34)は強調する。

◇施設概要

・施設名/「百人町屋 台村」

・オープン/平成5年 5月

・所在地/東京都新宿区百人町二‐二〇‐二五

・電話/03・5386・3320(代表)

・代表/楊 維佳

・店舗面積/六五坪

・客席数/六〇席

・屋台数/中国・台湾・東南アジア系料理計八店

・客層/日本人(サラリーマン、若い女性)、五割、東南アジア系外国人五割

・客単価/二〇〇〇円

・売上高/月商二〇〇〇万円

・営業時間/午後5時~翌朝5時、無休

楊さんは上海から来日して九年、屋台村のまとめ役であり、同邦、外国人スタッフの相談相手でもある。

日本人の奥さんをもらい、すでに三歳になる息子もいる。東京・板橋の高島平に住み、毎日店に通っている。ビジネス感覚があって、温厚な人柄なのでスタッフの信頼も厚い。日本にきて日も浅い料理人にとっては頼りになる存在だ。

メニューは一店舗当たり最低でも五〇~六〇品目を提供している。単価は六〇〇~一五〇〇円、二〇〇〇円どまり。二〇〇〇円以上のものはない。

グループできてシェアしながら食べると、いろんな料理が楽しめて安く上がる。客単価は食べて飲んで二〇〇〇円前後。

おすすめ料理は上海料理であれば、糖醋小排(スペアリブあんかけ=前菜)一二〇〇円、蝦肉大〓飩(エビワンタン自家製八個入り)八〇〇円、葱爆羊肉(ラムポワレ)一五〇〇円、上海咸鶏(とり肉の塩味付)一〇〇〇円、宮爆田鶏(カエル料理)一五〇〇円、肴肉(冷菜)一八〇〇円、油条(中国揚げパン=一本)二〇〇円、烙餅(中華パイ=一本)七〇〇円など。

客層は日本人と外国人(中国・東南アジア系)が半々で、日本人はサラリーマンや若い女性が多い。月商約二〇〇〇万円。

店舗面積六五坪、客席数(最大収容人数)六〇席。一店舗当たりキッチンスペース二~四坪。このミニ空間で一店舗平均日商六万円以上は売る。

日本人レストランに比べ人件費、食材原価ともにはるかに低いので、収益力は大きいと理解できる。

「それぞれが自分の店だし、食材も安く入れている。だから、儲けは大きい。みんな喜んでいます」(楊さん)。

土地は借地で賃料が月額坪一万円。四年単位の契約。次回の再契約までにはまだ一年以上が残っている。

営業時間午後5時から翌朝の5時まで。もう少し店に清潔感と従業員(サービススタッフ)のガンバリ、ハッスルさがあれば、固定客も増え、売上げもさらに高い水準をキープするはずだが、これは屋台村代表の楊さんのマネージメント次第ということだ。

一五人収容、一時間一五〇〇円、日本語のほか、中国、東南アバージョン(レザーディスク)のカラオケルームも併設している。

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