ご当地焼肉 北海道(1)苫小牧「金剛園」 どさんこ焼肉はジンギスカンも主役
焼肉は牛肉のおいしさが強すぎるため、肉の善し悪しばかりが注目され、地域や季節の特色はあまり語られない。ところがよく観察してみると、肉の部位、タレの味覚、調理方法など、地域の風土に育まれた「ご当地焼肉」が数多い。今回は北海道の「ジンギスカン焼肉」をご紹介!(事業協同組合 全国焼肉協会 広報担当理事 岡安秀一)
●焼肉の生ラムジンギスカンはアルミホイルでモヤシを包み焼き!
北海道グルメといえば、ジンギスカン(ラム・マトン)が有名だ。街中では観光客向けのジンギスカン専門店を数多く見かける。だが道民にすれば、ジンギスカンは家庭で普通に食べる料理。日常色が濃いため、外食でラム・マトンを食べる場合は、焼肉店に行く人が多いという。焼き網で直火焼きにして食べるラム・マトンは、専門店のジンギスカン鍋とは異なる「心地よい香ばしさ」が魅力。北海道の焼肉店にとってラム・マトンは、主力の牛肉と同格に欠かせない存在だ。
苫小牧市の焼肉店「金剛園」(市内5店舗)もその典型。1985年の創業以来、北海道産牛を売りに本格焼肉を展開しているが、選りすぐりのジンギスカンも看板料理の一つ。とはいえ、焼き物(肉類)約30品の中でジンギスカンは「生ラム」の一品のみ。さほど目立たないのだが、地元では目立つ必要がないほどポピュラーな存在で、売れ筋ランク(注文数)ではカルビとロースに次ぐ3番手を誇る。実に来店客の8割がジンギスカンを注文する人気ぶりだ。
須藤精作社長は「焼肉店で食べるジンギスカンは、(1)心地よい香ばしさ(2)あっさりした後味(3)非加熱のつけダレ(生ダレ)が魅力です。飽きずにパクパクたくさん食べられます」と語り、「道民にとってジンギスカンは、鍋料理の一種であり、昔ながらのソウルフード。焼肉店で食べるジンギスカンは、現代の味覚にマッチした外食のソウルフードといった感じです」と説く。
そんな金剛園のジンギスカンは、焼肉店ならではの提供方法がユニークだ。ジンギスカンには付け合わせのモヤシが欠かせないが、焼き網でモヤシを焼くと焦げたり落ちたりするので、アルミホイルでモヤシを包んでアルミホイルごとロースターで焼かせるのである。また、ニラをすくって食べるような付けダレもジンギスカンの醍醐味。タレ好きの地元客が多いことから「追いダレ」を100円で提供している。
須藤社長は「地元客に向けて当たり前に提供してきましたが、近年はジンギスカン目当ての出張客が増えています。コロナ収束後、観光客への波及にも期待したいですね」と見据えている
◆ワンポイント
なぜジンギスカンが北海道名物?
北海道では羊毛(衣料)と羊肉(食料)を得るため、明治時代から羊飼育が行われてきた。そして大正時代、軍隊・警察・鉄道員の防寒着を作るため「緬羊百万頭計画」が立案され、滝川市と札幌市に種羊場を設立。羊飼育の発展と並行して羊肉を食べるジンギスカン文化が根付いた。後、羊飼育は衰退し今日の羊肉は輸入物が一般的。
◆店舗情報
「金剛園」
北海道苫小牧市新中野町3-9-6