三共、世界初海水から分離した製パン用酵母「三共イースト、M」開発、発売

機械・資材 1992.08.05 7412号 1面

三共㈱(東京都中央区、03・3563、2157)は、海水から分離した製パン用酵母を開発し、海洋酵母「三共イースト・M」(特許出願中)として発売をはじめた。従来、酵母の菌株は地上の野生菌株から探されていたが、今回のように海水から見つけられたのは世界でも初めて。

海洋酵母「三共イースト・M」は、従来のパン酵母と同じサッカロミセス・セレビシェに属する酵母。安全性に優れ、しかも海から取出したため、より自然を感じさせる。

同品は、自然界に存在していたそのままの性質を生かしながらも、発酵性能に優れ、しかも焼き上がりはソフトで口どけが良く、クセ(独特のイースト臭)のない香りで、今後のパン製品開発に一つの方向性を与える。特に、良好な中種状態も保つ(常温で長時間可能、種落ちが少ない)ため、中小ベーカリーは、特別な設備が無くてもオーバーナイト製法に取り組むことが出来るもの。

酵母は、低糖生地発酵力が良く食パンには最適な性能を発揮する。また中糖~高糖生地にも使用できる汎用タイプ、種落ちが少ないので、オーバーナイト製法(長時間中種法)が可能などで、特に出来上がったパンの風味と食感に最大の特徴が発揮される。

風味は、アルコール・エステル類の香りは通常のものとほとんど変わらないが、有機酸の部分では大きく違いが現れ、イソ吉草酸、イソ酪酸、n‐酪酸などが抑えられ、イースト臭を感じさせない、さわやかでマイルドな香りを出すことが出きるようになった。好まれない成分が少ないため、好ましい香りがより一層引き立つということも言えそう。また食感の部分では、発酵力が通常品に比べると高くまた長く持続するため、口溶けがよいマイルドな製品に仕上げることが出きる。

同社は、研究に当たり自然界を「微生物の宝庫」と考え、そこから新しいパン酵母を多数発売してきている。昭和56年には業界に先駆けて冷凍生地用酵母「三共イースト・Y」を発売したが、これは国内の梅の樹液から分離した酵母。今回の海洋酵母は、それまでの開発経緯を受けながらも、初めて「海水」に着目して開発し、成功した。

なお、販売は同社関連会社、三共フーヅ㈱が担当する。

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