日本老化制御研究所・越智宏倫所長インタビュー

2002.05.10 81号 3面

一九八五年にこの老化制御の研究所を創設しました。キッカケはやはり自分自身の問題からです。栄養学をずっと研究と事業のテーマにしていた関係で、四五歳になっても老眼鏡が要らず自信を持っていたのですが、五〇歳になった時、老眼を意識しました。ショックでしたね。他にも耳鳴りや背中の筋に痛みがあった。これを契機に老化がどうして起こるか真剣に研究しようと考えました。

この年、ドイツのヘルムート・シーズが「アクティブ・オキシゲン」(活性酸素)の本を発表しました。テーマはこれだと確信しました。同時に世界の老化制御研究はどこまで進んでいるのか知らなくてはと、世界のこの分野の学者を訪ねる旅をスタートしました。「タイム セルズ アンド エイジング」著の老年医学の父といわれる南カリフォルニア大学のバーナード・ストレーラー、「マキシマル・ライフスパン」著のカリフォルニア大学のウォルホードなど。それからNIHの中にあるNIA(ナショナル・インスチテュート・オブ・エイジング)にも行きました。

極端にいえば今後、若返りということも可能になると私は思います。人間は、いままで想像してできなかったことは何もない。二〇〇年前だったら馬よりも速く走ることなんて考えられなかった。しかしいまは新幹線のような乗り物もある。鳥のように空を飛びたいという夢も、飛行機が実用化し実現した。月旅行、海底旅行しかりです。いま残されているのは若返り、若さを保つことだけです。秦の始皇帝の時代から、生活に余裕のある人はどこかに若返りの泉があるのではないかと想像していた。想像したことはここ一〇〇年の二〇世紀以降、すべて実現している。六〇代の人を一八歳にするのは無理にしても、一〇~二〇年前の活力のある状態を確保することは、科学で可能になってくると思います。

方法はやはり抗酸化です。酸素はこの地球でもともとは有害な物質だったのが、突然変異の生物がその毒を上手に使って効率よくエネルギーを使うことを覚え、それらが繁栄し、現在に至っています。人間がその頂点に立っているのは、食べ物によって抗酸化物をしっかりとっており、酸素毒を消去する機能が強いからです。だから人間は長生きできる。けれど寿命はある。これを延ばすには、さらに活性酸素を上手にコントロールし余分に出さないようにすればいい。

いま実践していること以上に、今後は酸素のないところで調理をする方法なども登場してくるでしょう。火というのものは便利ですが、功罪両方がある。人間以外の動物はみんな生食をして酵素や生理活性物質を最大限に活用しています。調理をしながらもそうした物を失わず、活性酸素ができにくいような方法が考えられます。

また、五感情報をフルに活用したストレスの解消、これは現代人にとって本当に必要です。人間の五感情報は視覚からが八割とされますが、人によってそれぞれです。気分の切り替えは自分に合った方法を探して下さい。私の場合はやはり視覚、万華鏡を覗くことです。朝の時間は習慣的に、あとはちょっと調子が悪かったりしたら、覗いていますね。いつでもどこでもすぐに気分転換ができるところがいい。

十人十色といいますが、健康法も一億人一億色です。なぜかというと、DNAが全く同じ人はこの地球上に六人ぐらいしかいないからです。サプリメントなども今後はその人にあったオーダーメードになっていくかもしれませんね。人間の英知を結集して、老化制御生活を実践していきましょう。

●プロフィル おち・ひろとも

農学博士。1934年生まれ。59年大阪府立大学農学部卒業。64年日研フード(株)設立。85年日本老化制御研究所設立。95年紺綬褒章受賞、「食品因子の科学とがん予防」国際会議・事務局長を勤める。2000年「遺伝子損傷測定法」の開発に対し「発明大賞特別賞」「科学技術庁長官賞」を受賞。

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