百歳への招待「長寿の源」食材を追う:クロモジ
クロモジとコブシはともに日本全土に分布し親しみの深い樹木。ともに薬効が多くポピュラー。クロモジは薬酒・薬剤・薬茶などに。コブシも薬酒や薬粥などに利用される。庭木としても欲しい木である。
(食品評論家・太木光一)
クロモジは落葉低木で、ほぼ日本全土に分布し平地から高山まで広くみられる。別名はヨウジノキ・アオハダ・トリコバシなど。生薬名は「釣樟(ちょうしょう)」と呼ばれている。クスノキの仲間で、枝を折ったり、葉をもむと芳香がある。
楊枝(ようじ)は読んで字の如くヤナギの枝で作るが、クロモジは黒い木の皮を残して作られ、これを料理界の隠語で「黒文字(くろもじ)」と呼んでいる。特に、その良い香りを生かし和菓子用の大型楊枝に用いられる場合が多い。
葉と枝からクロモジ茶が作られ、小枝は薬湯に利用され、根・皮は漢方薬材として効果的。樹皮や葉は精油を含み、黒文字油と呼ばれ、香水やせっけんなどの香料になる。根・茎・枝と、全く捨てるところのない価値の高い樹木といえよう。
利用例をみると、
(1)薬酒…小枝を洗って水気を切り細断して半干しにする。ホワイトリカー一リットルに対し一〇分の六ぐらいを用意し、好みで砂糖を加える。ほぼ一カ月で飲めるようになるが、熟成には三カ月以上が必要。美しいこはく色の薬酒が出来上がる。効用として、新陳代謝を促進し、健胃整腸・強壮・疲労回復・美容など。
(2)薬剤…根と皮の部分(漢方薬では「根皮」と呼ぶ)を利用する。根皮は必要時に掘り出し、根の皮をはぎ、水洗い後、刻んで風通しのよい場所で陰干しする。霍乱(かくらん、日射病のこと)をはじめ脚気・水腫に効果がある。根と枝は去痰作用があって咳や痰を除き気管支粘膜の充血に良い。また芳香性健胃剤として消化不良に良いといわれ、煎用されている。このほか枝葉も蒸溜し黒文字油を採取し健胃剤に利用されている。
(3)薬茶…クロモジ茶は薬用として民間で飲まれている。枝葉を春から秋にかけて摘み天日で乾燥する。飲み方は一日量一〇グラムを五〇〇ccの水で二〇分ほど加熱する。
これを二~三回に分けて飲むとよい。飲みやすい茶である。
(4)薬湯…浴用には葉が付いたままの小枝を利用する場合が多い。採った葉付きの小枝を一〇~一五センチの長さにそろえて半干しにする。これを一〇~一五本程度を束ねるか、細かく刻んで布袋に入れて、浴槽に入れる。クロモジの浴湯は香りも良く、神経痛をはじめリウマチ・肩こり・腰痛などによく効く。疲労回復の効果も大きく、精神安定用によい。
クロモジは高さ二~三メートルで庭木にも適しているが効用は極めて大きなものがある。