新型コロナ:浮上するプラごみ問題 タイ

総合 ニュース 2020.04.10 12037号 06面
非常事態宣言以降、一気に増えた食事の宅配サービス。そのほとんどがプラスチック製品による過剰包装=3月31日、バンコクで小堀写す

非常事態宣言以降、一気に増えた食事の宅配サービス。そのほとんどがプラスチック製品による過剰包装=3月31日、バンコクで小堀写す

人気飲食店「ケンジズ・ラボ」で使用されている再利用可能な食器類=3月31日、バンコクで小堀写す

人気飲食店「ケンジズ・ラボ」で使用されている再利用可能な食器類=3月31日、バンコクで小堀写す

新型コロナウイルスが全世界で猛威を振るう中、タイなど東南アジアの国々では新たな環境問題が浮上している。非常事態宣言による飲食店の営業禁止で食事の宅配や持ち帰りをする人が多くなったことから、プラスチックごみの排出量が増加したというのだ。加えて、ウイルス感染を嫌って使い捨てのスプーンやフォークの使用に切り替えたり、買い物袋の再利用をやめる人も増えているという。人口最多のインドネシアでも同様で、3月以降これらプラスチック製品の生産が追いつかない状況だ。

「ごみの量は年始に比べ2倍以上にもなった。おかげで出動件数も増えた」。こう話すのはバンコク首都庁の清掃担当者。2月中旬以降、家庭や事業所から出るごみの量が徐々に増え、3月下旬以降は一気に拡大。収集が追いつかない状況にあるという。

増えた大半が、プラスチック製や使い捨ての袋・容器類のごみ。宅配や持ち帰り時に提供されたビニール袋や食器、さらにはスーパーやコンビニエンスストアで食品を購入する際に使ったビニール製の袋などが主なもので、中には汚れもほとんどなく、まだ使えそうなものも。

だが、政府や報道からの情報で、ウイルスが空気中でも3時間、プラスチック製の容器などの中でも数日間生存することが伝えられると、汚れがないものを引き続き使ったり、洗って再利用しようという動きは極端に少なくなった。その行き先がゴミ捨て場だった。

2億6000万人もの人口を抱えるインドネシアでも同様の事態が起こっている。多くの人々が使い捨てプラスチック製の袋や食器を選んで使うようになった結果、ごみの排出量が一気に拡大。行政による収集業務は飽和状態となり、プラスチック製品の生産も追いつかなくなっている。

使用後の使い捨てマスクも同様にごみとなっている。

水洗いによる繰り返し利用が可能な布製マスクではウイルスを食い止めることができないとメディアが伝えると、街の薬局にあった不織布製の使い捨てマスクは一気に棚から姿を消した。残ったのは日々廃棄されていくごみの山。バンコク首都庁では、首都圏だけでも1日当たり数千万ごとの使い捨てマスクが廃棄されているとみている。

タイでは近年増え続けきたプラスチックごみを減らすため、1月からスーパーなどの小売店舗で使い捨てレジ袋の配布中止を呼び掛け、実行に移したばかり。多くの小売店や飲食店でも足並みを揃えてきたが、新型コロナのまん延以降は、関心は薄れている。

排出されるプラスチックごみは通常の温度で燃やした場合ダイオキシンが発生するため、800度C以上の高温で焼却しなければならない。しかし、地方を中心に高温処理できる焼却炉はまだ十分に行きわたってなく、その場合は大気汚染にもつながる。ここにも環境問題が横たわる。

こうした中、飲食店の側からごみの減量化に向けた取組みも始まっている。バンコクの人気ビストロレストラン「ケンジズ・ラボ」では、営業が宅配と持ち帰りとなって以降、極力ごみを出さない仕組みを模索。きれいに洗うことで再利用可能な「重」や「丼」を多用し、客にも協力を呼び掛けることにした。結果はまずまず。

オーナーシェフの中山健次さんは解説する。「客も意識は同じ。新型コロナで大変な時だからこそ、ごみ問題についてもきちんと意識して取り組んでいきたい。売るだけでは終わらない、付加価値の高い店作りを続けていきたい」(バンコク=ジャーナリスト・小堀晋一)

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