食のプロが2019年に注目した新製品ベスト10、1位は「飲むおにぎり」

「飲むおにぎり」(ヨコオデイリーフーズ)

「飲むおにぎり」(ヨコオデイリーフーズ)

新しい切り口、時代に合ったニーズ対応、ブーム、そしてブランド力、これらを掛け合わせたり、特徴を特化させたりして登場する新製品の数々。人々の生活がますます多様化する中で、2019年も例年以上に“ニッチ”な製品が少なくなかった。その一方で、外食店などの流行の影響を受け、世間的なブームを反映したアイテムもあり、2019年ならではの動きも見られた。そのような多数の商品群から、特に話題になったり、注目されたアイテム10品をピックアップした。なおデータは、日本食糧新聞社が運営する食品業界向け会員サイト「食@新製品」から使用した。
また20日発表となった令和元年度「第38回食品ヒット大賞」(日本食糧新聞社制定)の優秀ヒット賞受賞商品についてもあわせて紹介する。

【1位】簡便・時短ニーズに対応した「飲むおにぎり <梅かつお><梅こんぶ>」

ご飯を握った固形物としてこれまで定着している“おにぎり”に対し、固定観念を覆すスタイルでインパクトを与えた「飲むおにぎり」。スパウト付きパウチ市場(ゼリー飲料など)という面からも、フレーバーが固定化されがちな中で“おにぎり”という斬新な切り口で、話題を呼んだ。

しかし、話題性ばかりではない。簡便・時短ニーズに対応という点で評価を得た。特にスマートフォン世代にとって、少々行儀は悪いにせよ、食事中でも画面を見て触りたいとなると、片手で食べられ、そして手も汚れない、というのは理想的な食事形態でもある。

また、おにぎり1個分200kcalのエネルギーと賞味期間1年を実現したことで“非常食”にも、あまり噛まずに食べられるので“介護食”にも、という用途が生まれた。9月には、要望に応えて塩分量を約75%カットした減塩タイプも追加発売した。 

1パック130 gで160円 (税別)、「減塩」は200円(税別)。3月1日から全国発売中。

「飲むおにぎり」(ヨコオデイリーフーズ)

【2位】袋が皿になる究極の簡便性「WILDish <焼豚五目炒飯><豚キムチ炒飯><エビピラフ><チキンライス>」

袋ごとレンジで調理し、そのまま皿に移し替えることなく袋のまま食べる、というなんとも“WILD”な冷凍米飯。特許出願中の“スタンディングパッケージ”が、そんな仕様を可能にした。

増加傾向にある単独世帯に向け、一食で食べきる個食タイプ商品のニーズが高まっていると同時に、冷凍米飯の購入金額において特に男性の伸びが顕著という調査結果を基に、こんな商品が誕生したようだ。

マチつき袋は想像以上に安定感があり、食卓に置くとそのまま立つ。火を使わず、洗い物が一切不要という究極の簡便性が、忙しい現代人にマッチしているようだ。

ちなみに、「WILDish」とはwild(ワイルド)とdish(皿、食事)を掛け合わせた造語だ。

1袋270g (1人前) で、オープンプライス。8月1日から全国発売中。

WILDish <焼豚五目炒飯><豚キムチ炒飯><エビピラフ><チキンライス>」(マルハニチロ)

【3位】水を加えて混ぜるだけ「ニップン めちゃラク ホットケーキミックス」

「ニップン めちゃラク ホットケーキミックス」も、究極の簡便をより追求したアイテム。通常、ホットケーキを家庭で作る際は、ミックス粉のほかに、卵・牛乳などを用意し、さらにボウルや泡立て器、おたま、計量カップといった細々した調理器具も用意せねばならず、正直「面倒くさい」となりがち。

しかし、本品の場合、用意するのは水のみ。袋の中に水を加えて混ぜるだけで生地が出来上がり、そのまま絞り出して焼ける。水だけでも卵のコクと優しい甘さのあるふんわりホットケーキが出来上がる。

実際、家庭内調理機会の減少でプレミックス市場は減少傾向を否めない。手作り需要を喚起するため、健康訴求や高付加価値商品を投入するほかに、“とても簡単にできる”ことを訴求したアイテムも必要なようだ。

1袋150gで140円(税別)。8月20日から全国発売中。

「ニップン めちゃラク ホットケーキミックス」(日本製粉)

【4位】市場の大きな転機となる乳児用液体ミルク「明治ほほえみ らくらくミルク」

乳児用液体ミルクは、粉ミルクと同様の成分で、調乳せずに容器開封後すぐに飲ませることができ、欧米を中心に普及している。しかし日本では、2018年8月8日の乳等省令改正によって国内製造、販売が解禁されたばかりだった。

これを受け、まず江崎グリコが2019年3月11日に「アイクレオ 赤ちゃんミルク」(紙パック)を全国販売。追って明治が「明治ほほえみ らくらくミルク」(スチール缶)を3月下旬に一部施設で先行発売したあと、4月下旬から全国販売を開始した。これは、日本における育児用調整乳市場では大きな転機ともいえる。

用途は、母乳不足や与えられない場合の授乳はもちろん、常温保存・常温飲用が可能なので災害時の備えといったシーンでの需要が増した。なお、「アイクレオ」は賞味期間6ヵ月、「ほほえみ」は賞味期間1年となっている。

さらに明治は、すでに使用している哺乳瓶用乳首が、缶にそのまま取り付けられる専用アタッチメントを開発。2020年春から「同6缶セット(専用アタッチメント付き)」(1290円<税別>)を展開予定だという。

240ml缶で215円(税別)。4月下旬から全国販売中。(アタッチメント付きは来春から発売予定)

「明治ほほえみ らくらくミルク」(明治)

【5位】しび辛ブームに乗って進化した「桃屋のしびれと辛さががっつり効いた麻辣香油」

2019年の初頭は“しび辛”ブームが日本の外食業界を席巻、それに伴い「シビ活」「マー活」などという言葉も生まれ、一般加工食品にもその波が及んだ。ポイントは、中国・四川料理の味付けである“麻辣”。中国原産のスパイス・花椒が持つ舌がしびれるような辛さの“麻”と、唐辛子のヒリヒリするような“辣”の組み合わせを採用した、スープ、カップ麺、菓子、パンなどが登場した。

そして調味料でもあり、そのまま食べても(!)よし、というのが「桃屋のしびれと辛さががっつり効いた麻辣香油」。花椒、和山椒、唐辛子、ごま油、菜種油を使った自社抽出の「しびれて辛い香味油」をベースに、フライドガーリック、フライドオニオン、黒ごまを加えて香ばしく仕上げた。焦がしニンニクで作ったオリジナル香味油も加えており、深いコクとほどよい苦みも感じられよう。

ちょうど10年前、2009年に同社が発売した「辛そうで辛くない少し辛いラー油」が一世を風靡(ふうび)。その頃から、辛さに対する深みや余韻といったものが進化しているといってもいいだろう。

105g瓶入りで、オープンプライス。8月26日から全国発売中。

「桃屋のしびれと辛さががっつり効いた麻辣香油」(桃屋)

【6位】今冬トレンドの発酵鍋「クアトロチーズ鍋スープ」

2019年の初めは“しび辛”ブームがピークを迎え、それは”鍋”にも反映された。ぐるなびが発表した「2018年版トレンド鍋」は、「しびれ鍋」でもあった。では2019年の後半、すなわち今冬の鍋のトレンドはというと「発酵鍋」だった。

発酵食品が持つ健康イメージが後押しした格好か、具材を納豆やチーズといった発酵ものにするもよし、鍋つゆ自体を甘酒や麹、味噌を使ったものにするもよし。そして加工食品では、家庭で手軽に楽しめる発酵系鍋つゆの新製品が目立っていた。

「クアトロチーズ鍋スープ」は、4種類のチーズが奏でるまろやか味に、白味噌を加え、さらにポークやガーリックを利かせた、ストレートの洋風鍋スープの素。キノコ類とも相性がよく、“菌活”にも好適。鍋の締めには、パルメザンチーズと黒コショウで味を整えたWチーズリゾットが提案されており、いつもとは違う鍋が楽しめる。

750g(3~4人前)で378円(税込み)。8月1日から全国発売中。

「クアトロチーズ鍋スープ」(ダイショー)

【7位】専門店のような唐揚げが作れる「AJINOMOTO から揚げの日の油」

「AJINOMOTO から揚げの日の油」は、各家庭の味付けはそのままに、油を同品に替えるだけで“専門店”のような唐揚げを作ることができるメニュー専用の油だ。

食用油は、家庭内調理(特に揚げもの)が減少傾向にある中で市場自体は縮小気味である。しかし、その一方で付加価値のついた食用油–健康オイル、“生食”を目的とした“かけるオイル”などの需要は拡大している。そうした市場活性の切り口の一つが、“メニュー専用用途”を提案した商品となろう。

缶コーヒー製品で“朝専用”をうたうように、意外と消費者にはシーンやメニューを限定した“○○専用”と書かれた方が便利で、使いやすいものだったりする。その意味でも“から揚げの日の”と掲げるメリットはある。

また実は「揚げ物」が減少する一方で、「鶏のから揚げ」だけは伸長しているという。こうした背景をうまくキャッチした製品といえるだろう。

400 gフレッシュキープパウチ入りで、オープンプライス。3月上旬から全国発売中。

「AJINOMOTO から揚げの日の油」(J-オイルミルズ)

【8位】満を持して新市場参入「檸檬堂 <定番レモン><塩レモン><はちみつレモン><鬼レモン>」

2019年のアルコールの新製品は、やはり“レモンサワー”に終始した感がある。もともと、RTD(レディー・ツー・ドリンク)アルコール飲料市場は他のアルコール類に比べ勢いがよく、2018年は11年連続で過去最高の規模に到達。2019年も同様の流れになるだろう。

そんなRTDの中でも“レモンサワー”がブレーク。アレンジした“進化形レモンサワー”を提供する外食店での人気とともに、メーカー各社も独自のレモン加工を訴求したレモンサワー缶を市場に投入した年でもあった。

その中でも話題を呼んだのが、コカ・コーラシステム初のレモンサワー専門ブランド「檸檬堂」シリーズだ。実は2018年5月から九州エリア限定で先行発売していた。しかし、九州以外の各地のユーザーからの発売を希望する声も高まり10月28日、満を持して全国発売に至った。

そのおいしさへの評価もあるが、やはり「コカ・コーラがアルコール製品を?」という驚きも大きかっただろう。レモンサワー市場への参入は、全世界のコカ・コーラシステムの中で、日本市場に向けた独自の取組みだという。

若者のアルコール離れという声もよく聞くが、“「コカ・コーラ」のアルコール製品”という衝撃は若い世代にも響くか。

150ml缶で、150円(税別)。10月28日から全国発売中。

「檸檬堂 <定番レモン><塩レモン><はちみつレモン><鬼レモン>」(コカ・コーラシステム)

【9位】タピオカ人気が追い風に?「クラフトボス <ミルクTEA>」

“働く人の相棒”「ボス(BOSS)」は、これまでコーヒードリンクのイメージが強かったが、3月に新提案として「クラフトボスTEA <ノンシュガー>」を発売。比較的、紅茶を好むのは女性が多いことで、「ボス」にも今までリーチできていなかった女性からも支持されているようだ。 そして夏には<ミルクTEA>を投入。おしゃれ感のある外観イメージと、ミルクティーでありながらすっきりとした味わいが好評のようだ。

実は2019年は、こだわり品質の新シリーズ「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズ <ミルクティー>」(キリンビバレッジ)や、25年目のフルリニューアルを行った「紅茶花伝 <ロイヤルミルクティー>」(コカ・コーラシステム)なども登場し、ペットボトル飲料カテゴリーでもにわかに“ミルクティー”が盛り上がったように思う。

まさに“タピオカミルクティー”の影響が、食品にも及んできたといっても過言ではないだろう。元々あったミルクティードリンクだが、タピオカブームによる再認識と、よりおいしい製品作りがうまく合致した結果とはいえないだろうか。

500mlペットボトルで170円(税別)。7月2日から全国発売中。

「クラフトボス <ミルクTEA>」(サントリー食品インターナショナル)

【10位】今までにない濃厚な味わい「ハーゲンダッツ 35周年記念商品 <翠~濃茶~(期間限定)>」

ハーゲンダッツが1984年に日本でアイスクリームの販売を開始して、今年で35周年を迎えた。世界のハーゲンダッツは当然日本でも愛され、プレミアムアイスクリームのカテゴリーでは他の追随を許さないほどの地位を築いた。日本限定のアイテムも多数発売されている。

さらに日本らしい<グリーンティ>は、<Green Tea><Matcha>フレーバーとして世界中に広がっている。

その35周年を記念した同品は、やはりお茶の世界を表現。茶道でいう「お濃茶」をイメージし、今までにない濃厚な味わいに。パッケージにも水引デザインを使い、日本らしい格式高い黒色のカップを特別に開発した。

ハーゲンダッツが持つブランドイメージと、特別感のある中身、いつもの「バーガンディーレッド」色とはちょっと違いながらも高級感漂うデザイン、すべてがバランスよく整った記念商品だった。

1カップ(100ml)で350円 (税込み)。7月9日から全国で期間限定発売(終売)。

「ハーゲンダッツ 35周年記念商品 <翠~濃茶~(期間限定)>」(ハーゲンダッツジャパン)

令和元年度「優秀ヒット賞」に21品 健康志向が依然強く

また12月20日には、日本食糧新聞社制定 令和元年度「第38回食品ヒット大賞」の受賞商品が発表となった。全国の有力小売、卸など92社のモニター企業に推薦を依頼、ノミネートされた商品について、大手食品卸代表者らで組織された選考委員会にて慎重かつ厳正な選考審査を行い、決定した。

今回の受賞商品の傾向をみると、業界初の血圧・血糖値・中性脂肪の三つの機能性を取得したヨーグルトや腹部脂肪を減らすノンアルコールビール、体内で素早くエネルギーになりやすく子どもから高齢者まで使える健康オイルなど、根強い健康志向をベースに機能性に優れた商品が依然強さを発揮した。

袋ごと調理・袋が皿代わりになる個食ニーズに対応した冷凍食品やチューブタイプでいつでも好きな量だけ使える薬味、おむすびのお供や味噌汁代わりになる即席麺、働くお母さんの悩みを解決した子ども向け調味料、液体ミルクの製造販売解禁で育児負担の軽減や災害時にも対応する商品の受賞も目立つなど、簡便・利便性のニーズの高さも裏付けていた。

令和元年度「第38回食品ヒット大賞」の受賞商品

◆優秀ヒット賞(部門別、社名五十音順)

〈一般加工食品部門〉
・「アイクレオ赤ちゃんミルク」 江崎グリコ
・「きざみねぎ塩」 エスビー食品
・「キリン カラダFREE(キリン カラダフリー)」 キリンビール
・「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズ ミルクティー」 キリンビバレッジ
・「クラフトボス」の紅茶シリーズ サントリー食品インターナショナル
・「創味だしのきいたまろやかなお酢(だしまろ酢)」 創味食品
・「たっぷりたまねぎポン酢」 徳島産業
・「カップヌードル 味噌」 日清食品
・「日清オイリオのMCT」 日清オイリオグループ
・ハウス「味付カレーパウダー バーモントカレー味」<甘口> ハウス食品
・「明治ほほえみ らくらくミルク」 明治

〈酒類部門〉
・「アサヒ 極上<キレ味>」 アサヒビール
・「檸檬堂」 日本コカ・コーラ

〈チルド食品・フローズン食品部門〉
・「TAPIOCA TIME ブラックタピオカミルクティー」 安曇野食品工房
・「シャウエッセン チェダー&カマンベール」 日本ハム
・「WILDish(ワイルディッシュ)シリーズ」 マルハニチロ
・「トリプルヨーグルト」 森永乳業

〈菓子・パン部門〉
・「じゃがいも心地」 湖池屋
・「ひとくちルマンド」 ブルボン
・「オリゴスマートミルクチョコレート」 明治
・「塩バターフランスパン」 山崎製パン

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