植物性の代替肉バーガーが米国で人気 肉離れが進み市場も変貌
米国の国民食、ハンバーガー。米国人は、年間500億個のバーガーを食べている。週に3個のバーガーを食べている計算になる。これは乳児やベジタリアンも入れての計算なので、実際にはもっと多い。その米国のバーガー市場に大きな変化が起きている。
見た目も味も食感も肉そのもの
米国の人口の5%から8%がベジタリアンだと推測されている。つまり推定百数十万~二百数十万人のベジタリアンがいるということだ。かねてから、ベジタリアン用には、植物性のものをパティとして使ったベジーバーガーが存在した。
ただし、べジーバーガーは、バンにパティを挟むというバーガーの形状はしていても、味は別物で、店によって千差万別。べジーバーガーは、とにかくパティの材料が植物性であればいいことから、豆類やナッツ、コメ、サツマイモ、コーンなどを使った、オリジナリティーに富んだメニューが揃っている。
が、ここで登場したのが、植物ベースの代替肉を使った肉なしバーガー。ベジーバーガーと異なり、こちらは、見た目も味も食感も、そして、焼くと赤みが茶色く変色するという調理具合も、とにかく肉そのものだ。バーガー市場を駆け抜けている代替肉の現在の双璧が、「インポッシブル・バーガー」と「ビヨンド・バーガー」だ。
インポッシブル・フーズの経営陣は、トップの大学で博士号を取得した頭脳集団。タンパク質を大豆やジャガイモ、霜降り部分をココナツ油とヒマワリ油で作った代替肉に、大豆の根からDNAを取り出し、遺伝子組み換えをしたイーストに植え付けて培養させたものを混ぜている。
一方、ビヨンド・ミートの方は、タンパク質としてグリーンピース、緑豆、ソラマメ、玄米、ヒマワリの種、霜降り部分としてココナツ油とココアバターで作った代替肉に、肉の色を付けるためのビーツ、焼くと茶色く焼き色が付くリンゴのエキスを加えて作っている。こちらは遺伝子組み換えなし。
ついに、ラボで作る代替肉が市場に出回り始めたのだ。すでに全米各地の個別のレストランが採用しているが、さすがにこの流れに逆えず、「デニーズ」「TGIフライデーズ」「バーガーキング」「マクドナルド」など、チェーン店までが導入し始めた。
実は、蓋を開けてみると、代替肉のバーガーを食べている人は、ベジタリアンやビーガンではなかった。ある調査によると、代替肉バーガーの購入者の95%が、肉も食べるが、植物性のメニューも選択する弾力的な食者だった。
米国人の肉離れは続き、牛肉消費量は、1976年の1人当たり42.8kgをピークに、1980年代、1990年代を通して減り続け、2018年には25.9kgまで落ち、実にピーク時の4割減となっている。米国の消費者は全般的に以前に比べて、肉をより少なく、野菜をより多く食べている。
10年前に「ゼン・バーガー」という店ができたが、この店でも、大豆でできた肉そっくりの代替肉を使ったバーガーを提供していた。だが、時期がまだ熟しておらず、いつの間にか消滅してしまった。
それから10年の間に、一般の人も植物ベースを好んで選択する時代になり、意識の変化は米国の国民食にまで及んでいる。肉離れが続く米国では、これからも代替肉が広まっていくことだろう。大手の食品メーカーも開発中とのことだ。