食品値上げ、年内2万8000品超 価格交渉早期化も課題山積 昨年超えるペース

総合 ニュース 2023.06.14 12594号 01面

本紙独自調査による2023年の食品値上げ数をまとめた電子版「値上げニュース」は、2次元コードからも閲覧できます

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本紙調査で6月中旬までに明らかになった2023年の食品値上げ数は2万8000品を超え、昨年を上回るペースで価格改定の動きが進んでいる。値上げラッシュ当初は製配販の交渉が難航し、容易に価格が上がらなかったが、このところ状況は一変。光熱費などの高騰で小売業のコスト吸収が限界に達したのを受け、値上げ交渉の決着と店頭売価への反映が早期化している。一方で節約志向の進行によるマイナス影響も相次ぎ発生し、物価上昇局面の需要喚起へどう取り組むか、重要課題に浮上してきた。(篠田博一)

【表】主要食品カテゴリーの平均価格推移

【表】2023年6月~10月の主な食品価格改定(値上げ)一覧

●昨年超えるペース

13日現在、本紙調べによる今年1~10月の食品・酒類の値上げ数は累計2万8209品に達し、うち6月の価格改定は3675品を占める。即席麺の再値上げや業務用小麦粉、調味料はじめ、有明海の不作を受けた海苔業界が初の価格改定に踏み切った格好だ。

値上げラッシュが始まった21年はメーカー・卸の要請に小売業が難色を示し、「競合が上げるまで上げない」「上げるなら最後」といった厳しいせめぎ合いが続いていた。

しかし、昨年から続く水道光熱費や人件費の高騰を受け、小売業も店頭価格を上げなければコストを吸収できない状況に直面。最近では一方的な値上げ拒否や店頭売価の反映までに半年を要するような交渉は払拭され、「遅くともメーカー改定日の1ヵ月後には、値上げが実施されるケースが多い」(大手卸)状況となっている。

特に未曽有の値上げラッシュとなった22年は売価上昇の顕著な転機といえ、「それ以前は消費者物価指数の伸長率をケース単価の上昇幅が上回っていたが、昨秋ごろに逆転。以降、その傾向が続いている」(大手総合卸)。

そうした動きは、全国150社の小売業からデータ収集するKSP-POSの食品平均価格推移からも読み取れる。コロナ影響に伴う20年の売価上昇率は21年にいったん抑制されたが、22年のウクライナ問題や円安による輸入物価の急騰で再び伸長。直近1~5月の平均価格はさらに上昇幅を高め、コロナ前との比較では8.4%増と2桁に迫る勢いを示す。

●インフレで問われる需要喚起

長きに及んだ食品デフレがインフレへ転じる中、三層ではさまざまな影響や課題も発生。最も顕著なのが節約志向の進行による販売数量の減少で、前期は買上点数の減少を公表した有力小売チェーンが相次いだ。各層とも単価の上昇で売上げは維持しているが、数量の減少でメーカー・卸の工場やセンター稼働率が低下するなどのマイナス影響も発生している。

業績悪化に苦慮する小売業が卸に追加リベートを要求する話も聞かれ、競争環境においても「大手と中小の間で値上げ対応力に差が出ており、打つ手のない中小チェーンが採算度外視の安売りを仕掛ける恐れがある」(他の総合卸)と先行きを懸念する声も強い。

目下、業界の重要関心事はこの値上げラッシュがいつまで続くかだ。国際情勢に伴う原料の需給ひっ迫や為替相場は一時より落ち着いたこともあり、「時期は不明だが、今までのような流れは年内に一度止まるのでは」(業界筋)と見る向きもある。

一方で減益や損失が相次いだメーカーの前期決算が示すように、川上の価格転嫁はコスト上昇に依然追いついていない。恒常的な労働力不足と人件費の上昇、2024年問題による物流環境変化がもたらすコスト要因も考慮すると、来年以降も小刻みな値上げが継続するとの見方も強い。

そうした中、食品界はインフレ局面に対応した需要喚起が喫緊の課題だ。大手卸は値上げの影響でユニットプライスを意識した購買傾向が強まるとし、加工食品では大容量品への切り替えやバンドル提案強化や、惣菜では単なる値上げでなく原料や製法の見直しで価値を高める施策を並行。PB含めあらゆる食品が値上げに向かう中、価格と価値のニーズをとらえた需要喚起策を模索していく。

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