地元客を中心に人気の三美焼鳥

こだわりの塩と備長炭で焼き上げる

　【北海道】道内外食業界は、長引くコロナ禍で11月1日に規制が解除されるまで時短営業やアルコール類提供自粛など大きな影響を受けた。札幌では店舗で通常メニューをテークアウト可能にするだけでなく、コロナ禍で減少した店舗への来客をカバーしようと、キッチンカーを導入する事業者も多い。カレーやザンギ、たい焼きなど幅広いジャンルのキッチンカーがひしめく中、ラーメンに次ぐ新たな飲食の柱としてクリーンハウス（岩見沢市）が4月江別市に開業した「キッチンカー　三美焼鳥」に業界内外からの関心が寄せられている。（角守建哉）

　●江別から発信「うまい、大きい、安い」

　三美焼鳥は「うまい！大きい！安い！が『三』つ揃った『美』味しい焼鳥！」が名前の由来で、ボリューム満点のジャンボ焼鳥が名物。らーめん専家・羅妃焚（ラピタ）や炭火焼肉海鮮工房RAMA（ラマ）など飲食事業のほか、介護、保育、温浴・ホテル、不動産などさまざまな事業を手掛けるクリーンハウスが「コロナ禍で気軽に飲食店へ行けない人たちに、笑顔になれるおいしい焼鳥を届けたい」と立ち上げ4月3日、江別市野幌にオープンした。

　責任者を務めるのは、2月に同社へ入社した國部浩司氏。すすきので和食を経験した後エスニック料理に転身したが、コロナ禍で外国人が激減したことで開店休業状態となったため、新たな挑戦としてゼロからキッチンカー事業のスタートを決意。三美焼鳥の味を野幌から各地に広めるためFC展開にまい進している。

　キッチンカーは内部にエアコンや排気ダクトなどを取り付けた特注車で、まとめ買いにも対応できる広さの焼き台を完備。拠点となる江別店は車を10台ほど駐車できるスペースに出店し、他のキッチンカーを集めてイベント営業を行うなど、地域ににぎわいを呼んでいる。

　11月18日には、札幌中央卸売市場に初のFC店舗となる場外市場店をオープンした。市場関係者をメーンターゲットにした店舗併設型で、客が焼きあがりをその場で待てるのが特徴。江別店で通年営業した経験をもとに、問題や改善点など次第に反映させていく予定だ。

　焼鳥は國部氏が独自で塩・コショウなど7種類を配合したうまみのあるブレンド塩を使い、備長炭で中はふわっと、外はカリッと香ばしく焼き上げている。主力メニューは1本でもお腹いっぱいになるほどのジャンボ焼鳥（1本138円）で、注文の約7割を占め「1日1500本売れる時もある」という。1本の串にキンカンなど内臓や皮、もも肉を刺して焼きあげた数量限定の「もつ串」（同）も人気が高い。

　9月13日からは江別店限定で、ジャンボ焼鳥を花椒（ホアジャオ）と青唐辛子で仕上げたしびれとじんわりとした辛さが魅力の「しびれ鶏」も販売開始。食べ飽きない万人受けする焼鳥で、家族連れなど幅広い世代のファンを獲得している。このほか江別店では、道内産ふっくりんこを昆布だしで炊いて握った「焼鳥屋のおにぎり」（1個110円）も販売し、焼鳥と合わせて購入していく客も多い。現在、新商品としてもつ串を焼く際に生じる鶏油を塗って焼いた焼おにぎりの数量限定販売も視野に入れる。

　國部氏が焼鳥づくりで最も心掛けているのは「毎日食べても飽きない家庭の味」。味付けが濃くなりすぎない塩加減や、肉の大きさにばらつきを生じさせないためカットの際はグラム管理を徹底するなどこだわりは深い。焼鳥は毎日1本ずつ手づくりで、新鮮なおいしさを楽しめるように冷凍保存せず、今後FC店舗が増えた際には第2、第3と工場を広げ地域に根差した焼鳥を作る考えだ。

　また接客面では、マニュアルを作らずスタッフの個性を尊重する接客がモットー。焼鳥の味はもちろん、客と気軽に会話が生じるような地元に愛される店を目指している。

　國部氏は「FCオーナーへ敷地や家賃などを提案しながら出店場所を探すことが急務だが、来年度はFC5店舗まで増やしたい。出店した地域で三美焼鳥を知って、自分も始めたいと思う人が増えればうれしい」と期待に胸を膨らませる。

　コロナ禍でテークアウト事業への参入が相次ぎ、札幌商工会議所では11月中旬から、移動販売を応援する企画としてWebサイト上に日付や時間、場所、販売品目を登録できるキッチンカーマッチング事業「ここキチ-do」をスタートするなど、キッチンカー事業を後押しする動きも始まった。

　有名ラーメン店が定食やハンバーグの専門店など業態転換や、デリバリーといった新事業を手掛ける動きも見られ、外食各社の新戦略に注目が集まる。