海苔業界、トレンド・生産力とも海外が先行 消費構造変貌も

水産加工 ニュース 2020.06.08 12062号 01面

海苔業界で消費トレンド、生産力の両面とも海外が先行している。味付け海苔の全国的な浸透で韓国のバラ干しがヒットしているほか、国内の不作続きで生産量と原価が劣勢に立って久しい。安定していた国内の消費構造もコロナ禍を契機に陰りが見え始めた。主産地の韓国、中国がゲームチェンジャーになりつつある。(吉岡勇樹)

海苔はもともと数少ない全量自給を誇り、輸入割当で国産を守ってきたが、05年から韓中産の輸入枠を拡大。国産同様の黒海苔が安価で支持され、外食や留め型商品などの業務用で消費量を増やしてきた。

近年は西日本中心だった味付けが全国化。関西のCVSおむすびは多くが味付けとなって文化が深まり、定番の甘辛味が万人に好まれている。韓国伝統の味付けは甘さ控えめ、ごま油の香りで食欲増進効果もあるなど、惣菜、市販品の定番に育った。

人気を決定づけたのが今年、単品売上げ上位に浮上したバラ干しパック。バラ干しは韓国でジャバンと呼ばれ、岩海苔を薄片状に乾燥する。後引くサクサク食感という形態に進化し、もみ海苔の減った売場の隙間を突いた。試しやすいふりかけ用途を包装で伝え、主力の卓上ボトルと同じ天然の素材菓子、おつまみという即食を広げた。

国内生産は高気温による生育不良、生産者減で凶作、相場高が続く。実需への不足分を補う韓中産輸入は毎年増え、総枠は05年比8倍の32億1600万枚。平年作は韓国150億、中国50億枚とみられ、日本と逆に着実に積み増している。品種改良や輸出政策を強め、欧米やアジア消費の拡大に対応。トレンドがおむすびや寿司の海苔巻きから味付け、バラ干し、挟み焼きといったスナック人気へ急速に広がったのは日本も追体験した。

コロナ禍は死者の多い欧米で甚大。海苔も外食や惣菜向けの出荷は一部、前年比7割減にも及んだ。生産休止、消費急落による減産は中韓に見られ、前期産量はともに1割減った。価格も下がって仕入れ商社、メーカー在庫は潤沢。来期の相場安が確実視され、国内への影響も必至だ。

需要回復に懸念されるのが、消費構成比3割と最大のCVSおむすびの停滞。コロナ対策の出勤自粛でオフィス需要を失い、代わる内食増で補いきれない。既存減、競争激化の業態成熟も顕在化して脱海苔の展開も進行。大手の高品質、国産指定で安定生産と相場を支える好循環が崩れないか。文化保護、継承も危惧される。=関連記事4~5面

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