ブームになるかロシア料理 いずれも低価格で実力派

1992.09.07 11号 1面

ロシア料理は、フランス料理、スペイン・イタリア料理に比して、日本では、あまり知られていない。しかし、今後、日本でロシア料理のブームになる可能性はある。その大きな要因として、北方領土の問題が大きくクローズアップされて、いやがうえにもロシアがマスコミを通して報道される機会が多くなること、エリツィン・ロシア大統領の訪日ということもある。すでにアメリカで人気をよんでいるのがロシア料理。その現状をみると、核ミサイルや秘密警察に象徴される怖いソ連が消えて、アメリカから援助を受ける国に変って急に親しみがわいてきた。また旧ソ連から帰化した人も急増している。ワシントン、ニューヨークではロシアレストランが次つぎとオープンしてきた。人気をよんでいるのはロシアぎょうざのプリニを始め日本でもなじみの深いシャシリック・ストロガノフ・ピロシキ・赤かぶのサラダなど。何れも価格が安く、うまく、実力もある。しかもヘルシーでテイクアウトも容易である。中でもウクライナ風の農民パンは売り出すと長い行列ができる。今までにないパンでヘルシーでしかも味わい深いと、ファンはふえている。アメリカでは長い間ベールに包まれた国が身近な存在となって、当分ロシアブームは続きそうである。

ロシア料理の特徴としては、①ボリウムが多くハイカロリー②帝政ロシアのぜいたく料理と素朴な農民料理の混在③同じ料理でも地方によって全く異なる場合もある④冬の長い国なので塩漬、酢漬、くん製など保存食が発達している⑤野菜はじゃがいも、人参、玉ねぎ、なす、ピーナツ、キャベツ、大根、トマト、胡瓜など比較的種類が少ない。しかし、じゃがいも料理では六〇〇種類以上ある⑥魚はキャビアのとれるちょう鮫が世界的に有名。かに、たら、にしん、鮭、ます、かれい、さばなど。魚卵ではイクラとたらこ、淡水魚ではアセトリーナ、オームリ(シロサケ)など⑦肉では牛、豚、鶏、マトン、トナカイなどである。

ロシアの飲み物をみると、ウオツカは、ロシア人の国民的飲料であるが、世界中で広く愛飲されている。原料は大麦や燕麦からの蒸留酒を白樺の炭で「ろ過」したもので無色透明、無臭である。アルコール度は四〇度である。現在ではロシアの生産量よりアメリカの方が上回っている。同酒はカクテルのベースになることで日本ではなじみがある。ロシアでは冷やしてストレートにキャビアなどの肴を添えて飲む。

ワインは、一九三〇年代から黒海を中心に栽培が計画的に行われ、アルメニア・アゼルバイジャン・グルジアからクリミア半島にかけて良質のぶどうから白ではツナンダーリ、ナブレウーリ、赤ではムクザーニスバが有名である。また、これらのワインからつくられる、ブランデーも良品である。

ロシアは広大であり、その土地、その土地で、いろいろな料理、飲み方があり、奥の深い料理で、ある意味では、中国料理と相通ずるところがある。

ここで、ロシアの概要に少しふれておくと、ロシア料理を知ることはまず広いロシアを知ることから始まる。面積、世界の陸地の約六分の一と最大。人口は中国・インドについで世界第三位、二億五〇〇〇万人強、一〇〇をこえる民族、五〇の異なる言語、一二の共和国から成る。

北極圏の永久凍土から豊かな土地のウクライナまでさまざま。

この中からアゼルバイジャン・アルメニア・ウクライナ・ウズベク・カサブ・キエフ・キルギス・シベリア・グルジア・フラブ・コーカサス・白ロシア・モルタビアなど各地のロシア民族料理が誕生している。

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