世界の人気食材 手作り穀粒「クスクス」 地中海味の本命、機内食にも

1997.06.02 128号 21面

クスクスが地中海料理の一つとして注目され、特にこれから拡大する地中海味の本命として成長期待は大である。

パリやマルセイユなどではクスクス専門店が数多くみられる。また、フランスの学食にも出てくるほどポピュラーに。日本ではパリに飛ぶエアーフランスの機内食のディナーにサービスされている。

このクスクスは北アフリカの先住民のベルベル人がつくりだしたといわれ、三〇〇〇年の長い歴史を持つ食品である。北アフリカ諸国のモロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビアなどでは日常の食事として食べられている。チュニジアにみるクスクスの年間消費量は一人当たり二〇㎏と多い。

クスクスの原料はデューラム・セモリナで、マカロニやスパゲティと同じである。デューとはラテン語でかたいという意味。デューラム小麦はカロチノイド系色素が普通の二倍以上もあって黄色味が強い。セモリナは粗挽粉の意である。

マカロニやスパゲティは一二世紀ごろイタリアで生まれたとみられ、クスクスがいかに古い歴史を持つか理解されよう。

クスクスの製法は手づくり、原料はセモリナと水だけ。工程はふるいにかけ、混ぜ合わせて水につける。湿ったセモリナが小さな穀粒になるまで続けて、これを蒸してから乾燥させる。ふるいにかけて粒の大きさをそろえる。

出来上がった穀粉を大きさによって細かい、中ぐらい、荒いものに分類される。従来は家庭の主婦の手づくりでつくられていたが、大変な労力を必要とした。

最近ではクスクス生産の工業化が進められ、スイスの製粉機械メーカーによる近代的な大型工場も誕生し、全自動化の大工場も出現し、日産一六〇tの能力を誇っている。

この製品はアルジェリアなどアフリカ各国を始め、ヨーロッパ、アメリカ、カナダ、中近東にも輸出され、クスクスは世界の人気食材として注目されるようになってきた。

クスクスの成分はマカロニやスパゲティと比べて、エネルギーが少なく、しかもタンパク質や食物繊維に恵まれている。砂状の粒であるから食べやすく、保存性も優れている。

調理法はカスカーヌとよばれる蒸し器を利用していたが、最近では電子レンジを使用して手軽に早く出来るように変わってきた。クスクスを容器に移し、少量の湯を注ぎスイッチを入れれば数分間で出来上がる。これに肉、魚、野菜などのスープをかければよい。

クスクスの料理方法は非常に多く、モロッコに行けば四〇種以上のバラエティーがみられる。主食として代表メニューとなっているが、金曜日(宗教上の安息日)には多くの人々が食べている。肉は羊肉か鶏肉または魚で、野菜をトマトで煮込んだソースや、果物ソースなどをかける場合が多い。

主食として食べる場合が多いが、最近では副食として、また米飯やジャガ芋の代わりに供されている。特に朝食にも食べられるようになってきた。アメリカやヨーロッパではコーンフレークの代わりにクスクスが朝食として人気をよんでいる。

アントレとしてクスクスサラダに利用され、このバラエティーが急増してきた。肉や魚ではなくナツメヤシ(デーツ)やレーズン、クリームなどと混ぜて甘いクスクスをつくりおやつやデザートにも利用されている。

新しい地中海の味として安・健・珍・美食のクスクスはこれからの注目食材となろう。

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