特集・地酒と料理 「美禄亭」こだわっても低価格

1997.08.18 133号 10面

戸を開けると、井戸の上に四斗樽が乗っている、ビルの中だというのに土が敷いてある――そんな日本の旧家をイメージした造りの酒処が新宿から徒歩三分の場所にある。

だいたいひと月ごとに「美禄の会・銘酒を楽しむ」と銘打ってメニューを別に作り、一つの蔵元を取り上げている。取材した時は「司牡丹」。高知県の蔵元である。

戸を開けた時の四斗樽の銘柄の意味がわかる。たくさんのお酒をお客さんたちに味わってもらうための企画だという。確かに、毎月違う酒を飲むことができるのは通う楽しみがある、というもの。

このほかに一六種類のレギュラーの日本酒と、テーブルや壁にある一〇種類、合わせて常時三〇種類くらいそろえている。

日本酒に合わせた純和食メニューの味つけは関東風。仕入れもこだわっていて、北海道直送のスペアリブやホッケ、「真澄」の蔵元から酒粕を取り寄せ、魚を粕漬けにし、炭火で焼いたものを出している。まさに、酒処ならではのこだわりメニューといえるだろう。

その魚の粕漬けは逆に「真澄」に仕入れてもいる、ということ。「蔵元とのつながりを大切にしている」とおっしゃった意味がよくわかる。

ここまでのこだわりぶり、値段の方が気になるところだが、「うちは大衆向け、というか、低価格で素材の良いものをお客さんに楽しんでもらいたい。一人三〇〇〇円で、おなかも満足し、お酒もおいしく飲めるように工夫しています」とのこと。

さらにこだわりは続く。「実はこれからの企画として、まだ東京に進出していない、地方の蔵元を発掘中です。だいたい絞り込めてきたので、近いうちにもお店で飲めるようになります」ということで、大変楽しみだ。

「数があるだけの酒処ではなく、よそにないものでおいしい酒を追求していきたい」

一見しっとりしている美禄亭の、力強さを感じる一言だった。

酒処・味処「美禄亭」

<創業>昭和56年

<所在地>東京都新宿区代々木二-九-二久保ビルB1、電話03・3370・7300

<営業時間>午前11時30分~午後2時、5時~11時、日曜定休

<店舗面積/席数>一二〇坪/二〇〇席

<客単価>三〇〇〇円食事6:酒4

<一日来店客数>平均二〇〇人

<客層>四〇~五〇代のサラリーマンが七割

<月商>二〇〇〇万円

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