居酒屋チェーンの生き残り戦略 食材仕入れとメニュー管理
昼酒屋チェーンの多くは、一店当たり一二〇~一三〇のメニューアイテムをもつ。極めて繁雑な実情にある。メニューを絞り込みすぎると、客側の選ぶ楽しみがなくなってしまう。あれもこれもと増やせば、ムダを出す危険が伴う。客のニーズと店側の効率追求の接点を見出すことが大きなポイントになる。
定番メニューとシーズン性、オリジナルメニューのメニュー構成。どこのチェーンでも導入しているメニュー企画であるが、問題は食材をどう手当し、メニューをどう取捨選択していくか、ということであろう。
食材の三大分野は魚介類、肉、野菜(果物)であるが、まずはこの食材をどう安定して確保するかということである。一定のポーションを保って良質の食材を安価に手当すること、居酒屋チェーンは大量の食材を使うので、この点がチェーンビジネス成功のカギを握る。
村さ来、つぼ八、庄やにしろ、大手の居酒屋チェーンは独自の仕入れ、物流機能をもち、産地直結による食材仕入れを行っているのであるが、しかし、それでも専門の業者などに依存している比重が大きいので、まだまだ合理化すべきことは多いという。
庄やチェーンは首都圏を中心にして、直営、FC店あわせて三〇〇店近くの店舗を出店しているのであるが、魚介類などは産地直結を超えて、自らが漁業に乗り出すという業界でも例のない仕入れ機能を発揮している。
これは、庄やチェーンオーナーの平辰氏が出身地である新潟県佐渡(東浜)の漁業協同組合と定置網の新会社を設立して、そこから直接、各店に配送するという仕組みのもので、すでに昨年の春から機能しており、以前の四三%の食材原価は三八%くらいまでに引き下げるなどコスト低減に大きな成果をあげている。
定置網による魚種はアジをはじめタイ、サバ、イワシ、イカなど約二〇種にのぼり、これを水揚げしたのち、直に東京・大森にある自社の配送センターを経て、各チェーン店に届けられるというシステムである。
こういった画期的なシステムによって、鮮度の高い食材を安く仕入れることができ、そして、これによって他のコスト上昇を少しでも吸収しようということであるが、このシステムを拡大していけば、国内の漁業・水産会社ほか、海外の市場からも直接取り引きすることができ、チェーンビジネスにとっては大きな武器になる。
問題は食材の輸送体制をどう整備し、また物流コストをどう軽減していくかという、次の課題の解決になる。食材の仕入れは結局はメニューとの相関関係にある。消費者ニーズに合わせてどんなメニューを開発し、ラインアップするのか、またABC分析など数値管理によって、どのメニューを切り捨て、どのメニューを残すのか、あるいは、どのメニューに人気があり、売上げに貢献しているのか。
これらの点が明確でないと、食材の仕入れはシステム的に実行できないし、量や価格の面でもコントロールできなくなる。食材の問題でもう一つ考えなくてはならないことは、不良在庫を抱えないということである。
不良在庫を抱えないためには、材料の鮮度が落ちない範囲において、一回、あるいは三回とか一週間単位において、材料の消費を予測し、必要量をストックするという考えが重要になってくる。このためには、どんなメニューがどれくらい出るか、という全店の数値管理を徹底していないと、食材の受発注管理は不可能なことになる。