厨房のウラ側チェック(3) 温度管理とその問題点

1992.04.20 2号 20面

温度管理のあり方を考える時、すべてセットされた厨房設備において仕事する場合と設計段階より参画して仕事する場合とでは、担当者としての気構えに雲泥の差がある。しかし現実問題、個人の気持はさておき、与えられた設備や環境で、自己ベストの能力を発揮することが調理責任者の仕事になるわけである。今回のテーマとして取り上げた「温度管理」では、第一に厨房内の温度管理、第二に食材の温度管理、第三に調理品及び半調理品の温度管理に分類し、現状とその問題点を検討して見よう。

厨房内の温度管理は、一般的には客席と比較すると摂氏三~五度は高くなっている。目安としては摂氏二五度以下にすることが好ましいが、さらに低温にすることはベストである。ポイントとしては、調理従事者のユニフォームの着用での働きやすさと、厨房に置いてある食品のいたみを軽減させる温度帯を考えれば二〇度C未満がベターであろう。次に、食材の温度管理については、食材の鮮度維持と食材に最初から付着している初発菌数を増加させないことが目的であるから、各種食材の特性を生かしつつ保管する設備を設置することである。設備の種類としては、冷蔵庫、冷凍庫、ストッカー、ショーケースやネタケース等が一般的であるが、今後は特殊なものとして氷温庫や解凍装置などの営業的コンセプトによる機能重視や店舗デザイン的要素をからめた器機や装置類なども考えられる。食材の温度帯を簡略分類すれば一〇度C前後の野菜類や食肉製品、五度以下の生鮮魚やマイナス一五度以下の冷凍食品などに分かれる。実務的運用で大事なことは、営業時間中の低温調整と営業時間外の通常管理との切り換えをこまめに実行することが保管食材の温度変動による品質を悪化させない経済的手法である。

では、温度管理はどうすれば、一番適格に実施できるかは、以下の三点に簡潔にまとめられる。

一つ、温度表示の信憑性はセンサーの位置確認と正確に作動させる掃除。二つ、冷蔵庫等の庫内の容積に対する適性比率の約七〇%と庫内の整理整頓による対流の確保。そして最後に迅速な冷気を逃させない開閉である。

第三の調理品及び半調理品の温度管理では、低温の考え方と加熱処理の考え方を持つことが重要である。調理品の保存は摂氏五度以下が基本であるが、その調理品が未加熱品ならお客様の口に入るまでの保存としてフィルム等で調理品の風味維持、水分蒸発の防止や落下菌を防ぐ方法を講じること、調理品が加熱処理のものなら、急速放冷による方法を講じて冷蔵保存とし、又温料理なら再加熱をして仕上げることである。半調理品の場合においては前記同様の考えに基づき、再加熱をして、食品の中心部が六五度以上になるように考慮することであるが、料理との兼合を持って、衛生的対処を工夫して下さい。なお、根本的には作り置きのリスクを冒さない段取りを考えた調理基準が肝要である。以上が厨房の温度管理の要点であり、経済的対処法でもある。

温度管理は、衛生の三原則である「冷却」の実戦であり、現代食品科学の主流をなすものであるから、機器類も豊富なアイテムがある。われわれ、利用する側にとっては、大変に使いかっての良いものがあり、適当に妥協せず、料理法に適した機器や装置類の選択を心掛けることである。衛生的機器類の選択基準は、①汚れにくいもの②掃除しやすいもの③乾きやすいもの、以上三点に的をしぼってください。清潔な温度管理は、集客力の一助となり、オープンキッチンのセールスポイントになりますので、実務的ばかりでなく、デザイン的にも考慮することで、厨房で働く従業員のモラル向上にも役立ちます。しかし、原則は使い安く、そして衛生的なことを忘れずにして下さい。

食品衛生コンサルタント

藤 洋

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