新店ウォッチング:「ジャッキーズ・キッチン」世界的スターが参画
去る4月25日、東京・渋谷センター街の一角に、またひとつ、業界に話題を提供する新店がオープンした。アジアのみならず、本場ハリウッドでも成功を収めている世界的な映画スター、ジャッキー・チェン氏が、みずからメニューレシピにまで参画した「ジャッキーズ・キッチン」の渋谷店である。
この店は、ジャッキーズキッチンジャパン(東京・渋谷)が、昨年横浜にオープンした中華レストランの二号店であるが、今回、外資系の貿易商社との提携により設立された大昌ジェーケーフーズ(東京・港)が、日本国内での店舗展開の権利を取得し、今後、本格的にチェーン展開を行う計画をスタートした第一号店でもある。
三年前に設立されたジャッキーズキッチンジャパンは、「愛知県内の量販店内などでテークアウトの中華料理店を数店舗展開していたが、現在は横浜店一店舗のみの展開」(同社三浦氏)であり、今回、大昌ジェーケーフーズとの提携により、本格的なレストラン形式の店舗が展開されることとなった。
渋谷店は、東京・渋谷の中心であるセンター街のメーンストリートから一本裏に入った、飲食店などが入居するビルの一階にあり、ファストフードスタイルのテーブルサービス店であるが、近日中に、同じビルの四階に、酒類と中華の一品料理を提供するビストロ居酒屋スタイルの店舗もオープンする予定である。
「成龍厨房」と書かれた店頭のロゴマークにはチェン氏のイラストがあしらわれ、メニューブックには写真が、また店内やトイレには液晶モニターが設置されて、同氏のさまざまな映像が流されている。
メニューには、チェン氏の大好物であるという「パイコー麺」(七五〇円)や、毎日欠かさず飲んでいるという「緑の豆スープ」(七八〇円)、調理人でもあった氏の父親のレシピによる「成龍餃子」(七八〇円)など、いわくつきの商品が並び、ファンならずとも一度は試してみたくなる。
そのほかにも、「中華粥」(五八〇円から)、XO醤を使った「チャーハン」や土鍋で炊いた「土鍋ご飯」(各七五〇円)など、点心の一部で半加工食材を使用している以外は、すべてのメニューが大手ホテルから招いた中国人シェフらの手によって店内で調理されており、ファストフード的な店内とは対照的に、本格的な味が楽しめる。
すでに「うわさを聞き付けたお客や周辺の会社員などで、ピーク時には行列ができるほどのにぎわい」(大昌ジェーケーフーズ山本氏)であるという。
山本氏によれば、同社では、年内に三店舗、今後三年間に四〇店舗を目標として出店を計画しており、この本場の味を全国に広めたいと考えている。
◆「ジャッキーズ・キッチン渋谷店」((株)大昌ジェーケーフーズ、東京都渋谷区宇田川町三〇‐三、梅よしビル)開業=二〇〇〇年4月25日、店舗面積=約二四坪、営業時間=午前11時~午前4時、年中無休
●取材者の視点
わが国でも芸能人が経営する店は数多くあるが、さすがハリウッドで活躍する映画スターだけあって、店内の液晶モニターに映し出される映像もサマになっている。
チェン氏自身も、映画俳優として各国の料理を食べ歩くうちに、いつかは自分でもレストランを経営したいという希望を持つようになったということで、ほかではあまり見られない写真や映像が使用されていたり、自筆の署名入りの掲示があったりと、よくある、単に名前だけを貸した芸能人ショップとは一線を画していることがうかがえる店づくりだ。
本場の調理人が提供する料理は十分に本格的なものであるが、ただ、麺類とご飯物、点心などに絞り込まれた商品構成と、店舗規模、価格帯のアンバランスさが少し気になった。
店舗規模や品ぞろえをそのままに、ファストフード的なスタイルで展開するのであれば、システム化された調理方法でコストダウンを図るとともに、低価格帯で利用頻度の拡大を図らなければ出店立地が狭められるだろうし、逆に、商品単価を落とさずに、調理人の味や手作り感を大事にしたいということであれば、立地を変え、品ぞろえに幅を持たせて、レストランスタイルの大型店にシフトしていくべきではないか。
いずれにしても、このスタイルでチェーン展開を狙うためには人材の育成が最大の課題になるだろう。
チェン氏はかなりのきれい好きという話で、店のトイレにはチェン氏自身の手になる「トイレ使用上の注意一〇ヵ条」といったものが掲示されている。これがなかなか面白く、思わず使用後にあたりを見回してしまうほどだが、こういったユーモアが通じるのも、チェン氏のキャラクターによるものが大きいのだろう。