トップインタビュー:フォーシーズ代表取締役社長・浅野秀則氏

2001.03.05 223号 3面

宅配ピザ最大手の(株)フォーシーズは、今春から新事業に乗り出す。ひとつは、NTTPCコミュニケーションズと提携し、新会社を設立しての通販プラットホーム事業。Eコマースのノウハウや技術を生かし、インターネット上でショッピングモールを運営するとともに、ピザーラのデリバリーネットワークを活用したカタログ配布で、複合型の通販事業を展開する。両者の提携で、プロモーションから受注、配送、代金決済まですべて一貫した機能を持つ新事業が可能になった。もうひとつは、宅配ずしのチェーン化。既存ピザーラと複合店化し、デリバリー機能を共有することで、低コスト高収益の事業展開をもくろむ。ピザーラの業界一番のブランド力と、全国に巡らせた店舗網を武器に、新たな成長市場を作り出す新機軸を次々と打ち出す。

‐‐通販プラットホーム事業は、ITを活用した新しいビジネスになりますね。

浅野 ITのみならず、カタログなど通常の媒体との複合メディアとして、大きなシステムをつくりたいと思っている。宅配というのはアナログのビジネスだが、もっとその強みを生かしたマーケティングをやっていきたい。

ニュービジネスのポイントは、プロモーション機能を持っているということ。いまピザーラの店舗は全国に四九三店舗ある。このデリバリーネットワークがカバーする商圏は二二〇〇万世帯で、これは日本の全世帯の約半数に及ぶ。そこにピザーラのピザと一緒に、通販商品のカタログやサンプルを届ける。ポスティングではなく、お客さまに直接手渡せることがウチの強みで、このアナログこそが財産だ。

消費者は、インターネットのショッピングモールか、このカタログを見て商品を注文することができ、買った商品はまとめてピザーラの店舗から配達するという仕組みになる。

‐‐どんな商品を扱うのか。

浅野 通販で成功する商品は二通りある。重さがあって運ぶことが大変なものと、希少性の高いもの。われわれはスーパーマーケットのように何でも扱うわけではなく、フォーシーズ、ピザーラのブランドとして一定の基準を作る。

最初は日本では手に入りにくいチーズやワインなどの食材になるだろう。いま「TO THE HERBS」など各事業体のPB商品をすべてフォーシーズブランドに代えているところで、パスタやオイルなど一〇〇アイテムを超えるPB商品もそろえる。またおしゃれなテーブルウエアなど、豊かな食空間が演出できるような商品をお届けする。

扱う商品はウチでチョイスさせていただくが、この新規事業のフォーマットに乗っていただく企業については、すでに数社と話を進めている。

夏に都心部の店舗から実験的にスタートし、今年後期には関東一都三県での展開を考えている。

‐‐宅配ずしにも本格的に参入されるそうだが。

浅野 原宿で回転ずしの「柿家鮓」を展開しているが、今後はこれを宅配ずしとして広げる。四谷三丁目のピザーラとの併設店舗などで実験的に始めたが、平均月商八〇〇万円を上回る勢いだ。昨年12月の最盛期月商は一四〇〇万円、ピザーラと合わせて月商二八〇〇万円にも達した。おそらくこの事業は、非常に大きなポテンシャルを秘めている。今後、わが社の和食分野の代表になるだろう。

わが社としてこれまでさまざまな業態のレストラン事業を展開してきたが、そこで培ったレシピやノウハウが財産としてある。最終的にはこれをデリバリーに集約させていきたい。

‐‐既存の宅配ずしチェーンとの違いは。

浅野 柿家鮓のメーンは「ばらちらし」。マグロやアナゴなどを味付けした具材を混ぜ込み、たれをかけたものですべて手作り。三〇工程もあり手間が大変だが、非常に華があり、食べておいしいからお客さまのリピートも多い。商品力がすべてではないかと思う。

今後チェーン展開するが、店舗はピザーラとの合体を基調に考えている。ただ業務は完全に分けて、二つ店舗はお客さまからは独立して見える。一番コストのかかるデリバリー部門を共有する。ピザーラのデリバリー機能とバイイングパワーを生かせたら、低コストで非常に効率の良いシステムになるだろう。

イメージが混同しないように、バイクには名前を入れず、デリバリーエクスプレスという別会社が介在しているような見せ方をする。すしの鮮度を保つための保冷バッグも開発中で、3月には出来上がる。

四谷三丁目店はピザーラと柿家鮓を合わせて四〇坪。これをモデルに既存店を立地の良い場所に移転し、複合大型店を一年間で一〇〇店ぐらいの早いペースで展開していく計画だ。一年後の一〇〇店舗は、おそらく既存ピザーラとは伸び方が違うだろう。直営店を皮切りに複合化を推進する意向だ。

◆プロフィル

あさの・ひでのり=昭和28年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒。学生時代から旅行代理業などさまざまな事業を手掛ける。卒業後、ラーメン店、喫茶店、ビデオ店などを経営。昭和62年、映画「ET」で見た宅配ピザのシーンに直感し「ピザーラ」をオープン。業界初のTVCMで認知を一気に集め多店舗化を加速。現在、外食の多角経営のほか、ヨットレースなどスポーツ文化振興にも貢献している。

◆企業データ

(株)フォーシーズ(本社=東京都港区南青山五‐一二‐四、全菓連ビル、03・3409・

6000(代))事業内容=ピザーラ四九三店舗を基軸に、カジュアルイタリアン「TO THE HERBS」、グルメハンバーガー「クア・アイナ」、餃子専門店「宇明家」、天ぷら「天あさ」、割烹「有季兆」など多角的に外食事業を展開している。

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