名古屋版・繁盛店ルポ:ココナッツ・クラブ・カンパニー「懐かし家」

2001.06.18 230号 8面

東海地方といえば名古屋中心の情報が飛び交いがちだが、そこに「まった」をかけるのは豊田市を中心に六店鋪を展開する(有)ココナッツ・クラブ・カンパニー。南国風の「ChiChi」「Tam-Tam」といった個性あふれる店をつくり続けている同社が今年1月にオープンさせたのが「懐かし家」。「お店にはテーマが大切」という鈴木社長の言葉通り、全店に共通するのは「食べる」以上に「楽しさ」や「驚き」にとことんこだわっている点だろう。そんな同社の店を「懐かし家」を中心にリポートする。

最近ではなかなかお目にかかれないオロナミンCのホーロー看板に赤玉ポートワインのポスター。下町の屋台をほうふつさせる店内に足を踏み入れれば、古き良き日の思い出がよみがえってくるようだ。昭和の懐かしさの演出をテーマにした「懐かし家」は、懐かしさに素材へのこだわりをプラスした店として評判だ。

「三河で味噌おでんのお店をやってみたかった」と話すのは(有)ココナッツ・クラブ・カンパニーの鈴木邦宏社長。

「ChiChi」「Tam-Tam」といったトロピカルな南国イメージの強い店を展開している同社が、懐かし家を始めたのは今年1月。グループ内で「異色」の分野を始めるきっかけについて鈴木社長は、「和食中心の居酒屋をやりたいと思った時に、『懐かしさ』を感じられるお店をつくりたいと思いました。それに『ホッピー』や『電気ブラン』といったお酒をメニューに加えることで、懐かしさを舌で実感することができると思ったからです」

ちなみにホッピーは料理人出身の鈴木社長が修業時代に屋台で飲んでいた酒で、知る人にとっては懐かしく若い世代にとってはとても新鮮な飲み物だ。

懐かしさが店の雰囲気をつくり上げている一方で、料理へのこだわりも忘れてはならない。焼き鳥は味付けに昆布と塩を炒った北海道産の炒塩を使っており、しかも朝挽の三河地鶏だけを使用しているのでその日のうちに売り切れることもあるとか。

またこの地方の名物である味噌おでんには、赤味噌をはじめ京風白味噌や江戸味噌など五種類をブレンドしコクを出している。八種類あるおでんだねのうちよく出る大根と卵は五、六時間煮込むため、具の中にまで味噌の味がしっかりとしみ込んでいる。

「はっきりしたテーマをもってインパクトのある店づくりが必要だと思います」。安さとおいしさ以上に楽しさと驚きが必要というのが鈴木社長の信条。接客については「うちにはマニュアルはありません。気持ちを込めて、お客様の要望を受け入れられる接客が大切です」と、常に客とのコミュニケーションを心掛けているという。

鈴木社長が現在頭に描いているのは焼き鳥と海鮮炉端の店。「理想を現実に近づけるには名古屋よりも郊外である三河が一番」と今後も三河地方を中心に出店を計画していくとのことだ。

◆私の愛用食材 ホッピー

「これなくして『懐かし家』は語れません。常連さんの中にはホッピーしか注文しない人がいるほどです」と鈴木社長が挙げたのはホッピービバレッジ(株)の「ホッピー」。

ホッピーはノンアルコールビールの部類に入る飲料で、一般に焼酎と割って飲む。東京の下町で親しまれた飲料だが、この地方では珍しい。「二〇代から三〇代にかけての若い人にとっては新鮮なイメージで受け入れられているようです。名古屋からわざわざ来られる方もいます」とすっかり定着しているようだ。

◆売れ筋メニュー

〈1位〉焼き鳥、手作りつくね、わさびしそ焼き(各三八〇円)

〈2位〉味噌おでん、大根(一二〇円)

〈3位〉昔風しょうゆたこ焼き(三五〇円)

◆「懐かし家」(愛知県豊田市明和町三‐一〇‐一、0565・26・6606)営業時間=午後5時~午前1時、水曜定休

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