地域ルポ 神楽坂商店街 料亭の街 地下鉄計画で活気、全店舗の5割が飲食業

1993.05.03 27号 1面

神楽坂といえば、東京でも有数の花街、料亭の街として一世風びした坂の上の歓楽街であり、またここ数年来、ビルのスクラップ&ビルドによって新しい店舗が増えてきており、それに伴って若者の来街も多くなって古さと活力が感じられる。

JR飯田橋の西口(早稲田‐神楽坂通り)から外堀通りに下っていくと、すでに駅前から見えているのであるが、信号機が目に入る。「神楽坂下」の交差点で、この坂道が神楽坂商店街である。

しかし、この商店街は正式には「神楽坂下商店会」と称しており、行政地番の神楽坂(東京・新宿区)一丁目から五丁目まで、坂上を上り切ってやや行った大久保通り(約四〇〇m)までを本来の神楽坂商店街としているのである。

大久保通りを渡ったその先の通りも、もちろん一般にいう神楽坂商店街であるが、大久保通りから先は神楽坂六丁目で、別途に「神楽坂商店街振興組合」を組織して、商店街としては別個の商業ゾーンを形成している。

つまり、神楽商店街は大久保通りを境にして南北に二分した形になっているわけで、実際には二つの商店街で形成されているのである。

本稿で取り上げるのは「商店会」の商業ゾーンであるが、この商業ゾーンには新旧合せて一四〇店の店舗(飲食五割、物販・サービス五割)が軒を連ねており、独自の商業集積をみせている。

坂下から大久保通りに向って坂を上っていく。一本線の両サイドは土色の素焼レンガの歩道となっており、まだ枝も幹も細いケヤキが緑のアクセサリーとなって、街並に大きな潤いを与えている。

飲食店舗では不二家やハンバーガーショップのウエンディーズといったチェーン店、老舗のうなぎ料理店志満金、このほか、パスタハウス、居酒屋、焼肉レストラン、うどん、ラーメンショップ、喫茶、ブラッセリー、カラオケバーなどと多種多様の飲食施設を集積している。

神楽坂は明治、大正、昭和の初期まで東京でも有数の盛り場として栄えてきたのであるが、花柳界の凋落と料亭ビジネスの衰退と軸を一つにして、集客機能を大きく減速させ、ここ五、六年くらいまではかつての勢いはみられなかった。

しかし、バブル経済時代の地上げブームと外食需要の高まりで、古い店舗や民家のビル化が進んで、新たな店舗の出店が活発化、“神楽坂ブーム”といわれるほどに活況を呈して、若者も多く来街するようになってきた。

もっとも、飯田橋界隈は大学や高等学校、専修学校などが多く点在する学生の街でもあるので、ヤング層の“潜在マーケット”は当初から存在していたわけである。

問題は若者の感性やし好にフィットした商業店舗がどれだけ存在しているかということで、ここにきてこういった施設の集積が進んできたということである。

昨年秋にセガエンタープライゼズがオープンしたゲームセンターとディスコ、レストランの複合施設「ツインスター」はその象徴的な商業施設として、大きく話題を呼んだ。

実は、飯田橋、神楽坂地区はここ数年来、再開発事業が目白押ししてきているのであるが、この背景には地下鉄が乗り入れしてくるという事情が大きな要因となっている。

地下鉄は現在工事中であるが、平成7年には駒込‐目黒間の営団地下鉄七号線が、同9年には西新宿と蔵前、六本木などを環状化する都営一二号線も開通する予定であるので、これを見越しての再開発事業が進んできているのである。

「いまはバブルがハジケた影響で計画を中断しているケースも少なくないわけですが、しかし、地域のビル化計画、再開発事業が多く計画されているのは事実です。

ですが、現時点では店舗を出すといっても表通りでビルの一階という条件のよい物件は極て少なく出店するのは容易ではないという状況です」(つくば商事)。

同地区での出店条件は、新築一階の場合で家賃が坪二万五〇〇〇円、保証金が九〇万円というのがおよその相場といい、バブルがハジケても、そう安くはなっていないという。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら