ヒットの予兆:成田食品の黒豆モヤシ「くろっぺ」
価格訴求が優先されるモヤシ市場は、新製品開発が膠着状態にある。そのような状況下、成田食品(株)(福島県相馬市、電話0244・36・7777)は、黒豆モヤシ「くろっぺ」をこのほど新発売。業務用市場、量販店をはじめ引き合いが強まっている。
黒豆モヤシは黒豆を原料とし、現在主流となっている緑豆モヤシよりも細い。うまみ成分のアミノ酸を豊富に含み、味が濃く含有水分量が少ない。シャキシャキとした歯ごたえが特徴だ。
「くろっぺ」は従来の黒豆モヤシよりもさらに細身に仕上げ、黒豆モヤシの商品特性をより明確にしている。発売直後から予想をはるかに超える勢いでブレーク。関東圏では「古くて新しい味」が高く評価され、もとより黒豆モヤシの需要が高かった西日本では「お好み焼きや焼きそばなどの水分をあまり必要としない料理に最適」として絶賛されている。
元来、モヤシの原料といえば黒豆が主流であり、モヤシといえば黒豆モヤシを指していた。しかし、黒豆の原料調達難など諸事情が重なり、1987年、同社は緑豆を活用した「ベストモヤシ」を新商品化。同品は従来品の倍以上の高価格ながら、「根切り」という使い勝手の良さと「極太」という見栄えの良さが大好評を呼び、瞬く間に市場を席巻。他社も一同に追随し、緑豆モヤシが「モヤシのスタンダード」となった。その経緯を踏まえると、今回の黒豆モヤシの人気急騰は「モヤシの原点回帰現象」といえる。
「くろっぺは従来の黒豆モヤシの単なる再発売ではありません。緑豆モヤシとの競合を踏まえて、モヤシの新分野を切り開く有力な差別化商品に仕上げました」と商品開発担当の佐藤信一郎専務取締役。「黒豆モヤシの特性を生かせば、かつてない魅力的なメニュー開発が可能です」と意気込む。
原料はミャンマー産。同社の他商品と同様に豆は一粒一粒手選別されたもの。また、原料調達から生産・流通まで自社一貫ラインを有し、安全性とトレーサビリティーの徹底に努めている。昔ながらのモヤシでありながら、モヤシの新規需要を開拓する黒豆モヤシ「くろっぺ」の動向に注目だ。