女性に大ウケ、全国波及の兆し「蓮根饅頭」
「蓮根饅頭」といえば、伝統ある和食メニューの一品というイメージがある。すり下ろしたレンコンを葛などで固めてまんじゅう型にし、その風味と食感をあん掛けで楽しむのが、一般的な食べ方だ。しかし近ごろ、和食の本場・京都では、その蓮根饅頭をうどんやそばメニューに取り入れている店が増えているという。歴史が長いうどんやそばは、その土地により客の好みは定着しているもの。新メニューをアピールするには、素材と麺、だしとの調和はもちろん、その店なりの工夫もポイントといえるであろう。蓮根饅頭のメニューが好評という、京都の麺類店を紹介する。
◆蓮根饅頭とは?
レンコンをすりおろし、和風だしと調味料で味を調え、エビや椎茸、ギンナンやユリ根などを混ぜ込んでだんごにまとめ、蒸したり揚げたりして、あんをかけたもの。レンコンのすりおろしに山芋を加えたり、レンコンを粗くすりおろしたり、店によって個性が出る。レンコンの食感が楽しく、ヘルシー感にも優れ、懐石料理の一品として人気が高まっている。
最近は、手軽に扱える業務用冷凍食品も登場。写真は福島鰹(株)(京都市中京区、電話075・211・2940)の「冷凍・蓮根饅頭45g」。25gもある。
※掲載商品と掲載店舗のメニューは関係ありません。
◆手打ちそば割烹 流れ橋清修庵
「手打ちそば割烹 流れ橋清修庵」があるのは、時代劇のロケ地として知られる、木造の“流れ橋”のそば。地元客のほか観光客の利用も多いという、そば専門店だ。
この店では、人気のセットメニュー「桂川」(980円)に蓮根饅頭を取り入れている。セット内容は、ぜいたくレンコンだんごそばと季節のご飯、おぼろ豆腐、香の物。メーンのそばには、蓮根饅頭をトッピングし、たっぷりのネギと海苔で食する。蓮根饅頭は、だしで煮込むことでしっかりと味を含ませ、よりふんわり感のある口当たりに仕上げているという。
「蓮根饅頭のモチモチ感と、そばの歯ごたえが合いますね。珍しいねという声も多く聞かれます」と、副店長の高橋豊さん。
そばには、北海道産のそば粉を使用し、打ちたてを提供。だしは、鰹節を効かせたしっかりめの味で調えている。さらに、ざるそばなどには、自分ですり下ろす生ワサビを添えるなど、薬味にもこだわりが感じられる。また、セットメニューに付くおぼろ豆腐も、自家製のこだわりの品。天然の岩塩をかけて食べるのがお薦めで、甘みがある味わいが女性に好評とか。
「手を抜かず特色のある店づくりを」と、高橋さん。女性客も増やしていきたいと、季節ごとのメニューも展開中だ。
◇手打ちそば割烹 流れ橋清修庵(京都府八幡市上津屋里垣内58‐1、電話075・983・0132)営業時間=午前10時~午後9時、月曜定休
◆うどん専門店 うどんや辨慶
創業約40年の「うどんや辨慶」では、3年前にガラリとリニューアル。外観、内装ともに女性が入りやすい店に変え、うどん専門店として再出発したという。「メニューづくりも、女性へのアピールを意識しています。近隣のサラリーマンやOLのほか、ミセス同士の来店も多いですね」と、大田勇介店長。
女性客にも人気というのが、昨年から登場した「れんこんまんじゅう ぶっかけうどん」(780円)。冷・温の2タイプがあり、蓮根饅頭2個と大根おろし、天カス、ネギ、海苔、鰹節、すりごまがトッピングされている。植物油で素揚げした蓮根饅頭の香ばしさが、あっさりしたうどんだしともマッチ。シコシコした自家製麺に、蓮根饅頭のモチモチ感がアクセントになっている。
「蓮根饅頭の良さを生かせる食べ方を考えました。まず、“どんなもの?”という興味で食べてくれる人が多いですね」と、大田さん。そのほか、9月から3月の限定メニューとして、あんかけうどんもあり、夜には、蓮根饅頭がおでんのタネにもなる。
この店では、生湯葉を取り入れたご飯物などのヘルシーメニューも人気。今後も、うどんと完全無添加のだしが互いに引き立つような、体に優しいメニューを開発していきたいという。
◇うどんや辨慶(京都市伏見区両替町4丁目303、電話075・622・2356)営業時間=午前11時~午後9時、不定休
◆京のめん処 やま八
「京のめん処 やま八」は、うどんとそばどちらも楽しめる店。昨年から「蓮根饅頭のあんかけ」や「蓮根饅頭のぶっかけ」(各1100円)をメニューに加えたところ、人気が上昇中という。
あんかけの場合は、生ワサビを乗せて食べるスタイルだが、「蓮根饅頭は、ワサビと良く合いますね。これを目当てに食べに来る人もいます」と、吉村光司店主。蓮根饅頭は、大豆100%の白絞油で素揚げを。香ばしさと表面のパリッと感を出すことで、あんをかけても負けない味わいになるという。
そのほか、豆乳ベースのうどん鍋などにも蓮根饅頭を活用し、「ヒットを狙いたい」とも。というのも、吉村さんはなかなかのアイデアマン。この店では、ぶっかけメニューだけでも15種類があり、牛肉とマヨネーズを合わせた「牛しぐれのぶっかけ」など、ユニークな人気メニューもそろっている。
「地元客のほか、京都に来れば必ず寄ってくれる観光客も多い。単価は高めでも好評を得ていますし、やはり素材の質は大切にしたいですね」と、吉村さん。だしにも、高価な礼文島の香深昆布など5種類を使用し、手間を掛けて仕上げているという。
今後は、女性をターゲットにデザートも考え中とかで、さらなるメニュー展開を期待したい。
◇京のめん処 やま八(京都市伏見区西浦町8丁目1、電話075・643・7115)営業時間=午前11時30分~午後10時(火曜は午後3時まで)、第2火曜定休