魚食材最前線(5)マグロ、水温低く巻網、キワダ不漁を懸念
前回の記事の鰹は、7月に入っても相変わらず不漁で先日水産庁が4月末全国主要五一港の水揚量の対前年比を発表したが、鰹をみると、生鮮鰹二九%、冷凍鰹三七%の減少、単価は四二~五八%高くなっている。
漁師も漁の少ない物を獲るよりも、安定している漁の方に漁場を移す。今年の場合、5月に入って九州の本メジマグロの小型物一尾五~六㎏の漁が良く、特に今年の場合は、小型メジに「脂の乗り」の良い物が多く、浜値でキロ一〇〇〇円ほど。ために漁師は、このメジ漁に移り、巻網マグロとキワダマグロの漁が悪いうえに、漁師が減るので余計に少なくなっているのが現状。
6月に入って、三陸の本メジマグロも揚がってきた。これは小型物だが、脂の乗りがよく、浜値キロ一三〇〇円程度。また7月はさらに大型を主体に漁に入る計画らしく、ますます少なくなるのではないだろうか。7月の中旬から8月に期待するしかない。
今年の巻網マグロは二年続きの不漁のスタートで、例年なら5月中旬から伊豆諸島、三陸沖にかけて一日三~五〇〇本の水揚げがあるのが普通だが、今年は5月23日に塩釜で中小型一尾が四〇㎏程度のもので二〇〇本ぐらい水揚げされただけで、その後は全く漁穫がない。これは、今年太平洋の水温が一七~一八度と、例年より約三度も低いためと思われる。余談だが、魚が感じる水温の一度℃は、人間が感じる四~五度℃くらいに異なるので、三度違うことは、人間だと一〇~一五度違うのだから、かなりダメージが出ることが分かると思う。
また、今年は上空の気温がやはり例年より五~六度低いために、7月以降も急激な水温の上昇は望めず、このままの状態が長く続くのではないかと案じている。先日も、塩釜に揚がった小型メジマグロも、浜値一〇〇〇円から一一〇〇円ぐらいで入札されているのはまあまあの値段である。
今後、かなりの水温の上昇がない限り、今年の巻網マグロ、キワダは、やはり不漁として記録されるだろう。せっかく旬の魚を安く食べてもらおうと思っているのに、大変残念である。
今後このような自然の力に対して、ただ無力で待つのでなく、科学的技術力で自然と交わることが大切ではないだろうか。次回は、つづけて巻網マグロ、キワダマグロについて記したいと思う。
中松水産㈱専務中山昇三