2024年7月度、外食動向調査 フードコンサルティング
●32ヵ月連続増収で回復定着
日本フードサービス協会発表の外食産業市場動向調査によると、2024年7月度売上げは、前年同月比104.3%となり32ヵ月連続の増加を記録した。
インバウンド客の増加と、パリオリンピック開催による外食需要の盛り上がりを期待していたが、7月に入ると例年以上に猛烈な暑さが続いたことから、前月から一転して外出を控える人が増えた影響が出たようだ。客数は前年同月比0.7%と微増、客単価は3.6%増となった。
個別に見ると、前年比を下回った業態が29業態となり、今年最多を記録した。特に、比較的高単価の業態(木曽路95.8%、うかい96.3%、梅の花97.9%、ロイヤル96.5%)と、焼肉は4社すべてが前年割れしたほか、今年初の前年割れも5社(ロイヤル96.5%、マクドナルド98.4%、美濃路98.9%、ヨシックス99.4%、まいどおおきに食堂99.9%)となった。
●M&A巧者「クリエイト」
先日、すかいらーくが九州の地元うどんチェーン大手の「資さん」を買収するとのニュースが飛び込んできた。買収金額も約240億円という大型案件だ。「資さん」は、投資ファンド大手のユニゾンキャピタルが2018年に買収しており、以前の本稿にて投資ファンドの売却候補案件として取り上げたこともあった。
前号の外食M&Aの事例では木曽路などを取り上げたが、投資ファンド投資先の外食チェーンを外食大手が買収する事例は、もはや珍しいものではなくなった感がある。
そこで今回は、投資ファンドの投資先の買収も多く手掛け、M&Aを活用した企業成長に取り組んでいるM&A巧者として「クリエイト・レストランツ・ホールディングス(以下、「クリエイト社」)」の事例を見ていきたい。
クリエイト社は、三菱商事の社員だった岡本晴彦氏が1999年に創業。同年、お台場の人気商業施設だった「ヴィーナスフォート」内にイタリアン「portofino」を開業し、メディアの注目を集めたのが成功の端緒となった。
翌2000年には、岡本氏の出身母体である三菱商事から出資を受けたことにより、金融機関の評価も高まり、同年には初のM&Aとして、オリエント・レストランツより洋食レストラン5店舗の営業譲渡を受けた。2005年には当時の東証マザーズへ上場を果たし、ここから本格的な成長軌道に乗ることとなった。
クリエイト社による大型M&Aといえば、2013年のSFPダイニング株式会社の株式を74.6%取得し子会社化した案件であろう。「鳥良」「磯丸水産」で急成長した同社も、創業者が投資ファンドに売却後にクリエイト社が買収している。さらに、翌2014年にはSFPダイニングが東証二部に上場を果たし、親子会社で上場することとなった。
2015年には、「かごの屋」をチェーン展開する株式会社KRフードサービスの株式を、こちらも投資ファンドから99.8%取得し、子会社化している。
小ぶりながら光るM&Aも手掛けている。2019年には、うどん業態「銀座木屋」で知られる木屋フーズ株式会社の株式を100%取得し、完全子会社化している。「銀座木屋」は、東京銀座を本拠地にアッパーカジュアルなうどん店として50年以上の歴史を有する老舗である。
コロナ前までは日の出の勢いだったクリエイト社ではあるが、やはりコロナ禍の影響は甚大だった。上表の通り、コロナ直前の2019年2月期が業績のピークとなり、2021年2月期には140億円近い純損失を計上し、その年の5月の株主総会をもって創業者の岡本氏は社長退任となった。
現在はコロナも落ち着き、社会の正常化に伴いクリエイト社の業績も急回復しているだけに、M&A巧者として外食業界のカリスマ経営者といわれた岡本氏の退任は大変惜しまれるところだ。
しかし、岡本氏によって築かれた、成長ポテンシャルを有する業態をM&Aで取得し、成長軌道に乗せるというクリエイト社の成功パターンは、今後もクリエイト社の復活と再成長を支えていくであろう。