ザガットサーベイに見る流行最前線の裏側(4)日本料理編
最高の料理はお客様の顔を見てから作るコト…、そう言う人がいる。確かに同じ素材でも食される直前に皮を剥き包丁を入れれば旨さが違う。しかしそれが美味しい料理を作る「唯一無二」の方法だろうか?
街の名店と呼ばれる店で、すきっ腹を抱えたまま前菜一つ揃うのに三〇分もかかるような店がある。あたかも腹を空かせて来るのは野暮とばかりに、気付けば三時間近い時間を費やしてしまう、そんな店がある。それに比べて、分とく山での食事はいささか呆気なく始まる。席につくと程なくして最初のお皿が供され、こちらの箸の進み具合に合わせて極めて小気味良く料理が用意される。
ある時など大食い早食いの男ばかりで出かけたところ、たった四五分で全ての食事が終わってしまった。大仰な懐石料理やコース料理では思いもよらぬ程のスピードで、ならば料理が粗雑であるか? と言えば、その繊細たるや手を尽くした日本料理の粋に些かも引けを取らぬ。
確かにお任せ料理一種である、というお客様へのワガママを割り引いて評価せねばならぬのかもしれないけれど、それにしても。お客様の目に触れぬ場所でどれほどの手間を掛け、どれだけの時間で準備されているのか。そう思うと店で働く全ての人に頭が下がる。「人知れぬ努力を食べる」という、まさに貴重な経験がコノ店の醍醐味であろう、と私は思うのです。
((株)OGNコンサルティング常務取締役・榊真一郎)
〈「ザガットサーベイ東京のレストラン2001年度版」から引用〉
●日本料理部門
第1位/分とく山/港区西麻布四‐二‐一三、八幡ビル三階、03・3400・2968/価格目安=一万六八〇〇円/丁寧に作られた料理は涙もののおいしさ。日本料理一位を獲得した西麻布の名店。店主は有名になっても腰が低く、その気遣いに頭が下がる。
第2位/宮下/港区元麻布三‐一二‐一、03・3402・2655/価格目安=八七〇〇円/流行りの暗めの照明が独特の雰囲気を醸し出す、六〇〇〇円コースのみの和食屋。オーソドックスな料理は質が高く、リピート率が高い。場所も隠れ家的で、まさに癒しの空間。
第3位/青柳/価格目安=一万七三〇〇円/港区虎ノ門一‐二二‐一、徳島県虎ノ門ビル二階、03・3580・3456/徳島の料亭が虎ノ門に出店。上品でありながら豪快な、今に生きる日本料理には、思わず舌鼓を打つ。有名になりすぎたのが災いし、そりゃうまいけど高すぎ、という声も。
第3位は他に与太郎(港区赤坂)、すがわら(渋谷区恵比寿)。