名古屋版:「存在感ある居酒屋」次々と 創三舎・山本眞士社長に聞く
「さかなやま」を中心にさまざまなタイプの居酒屋を一二店舗展開中の(有)創三舎。すでに来年5月までに二店舗の出店が決まっており、予定通り順調に進んでいる。四八歳の山本眞士社長。若手経営者の斬新なスタイルのデザイナーズダイニングが目立つ名古屋の飲食界だが、その中でそれらとは異なり「山本流」いぶし銀のような存在感のある居酒屋を次々に提示する。「ほかにない店」づくりはよくいわれていることだが、実現するのはむずかしい。しかし、創三舎のオリジナリティーは今や突出している。勢いづく山本社長に現在の考えと将来計画を聞いた。
道交法による消費マインドの低下で前年は落ち込み、今年は数字を戻しつつあるけれど、前々年と比較するとまだ減少傾向だ。
よく見ているとお客さんの動きが変則的。原因はフリーペーパーの隆盛でディスカウント競争が激化したのと、新店が続々とできお客さんの流れが安定しないことにあるのだろう。
「さかなやま」は去年の6月、道交法改正と同時期に展開を始め現在六店舗となったが、大変好調だ。
既存店の「la‐goo」や「ISOROKU」をオープンさせてから五、六年が経過。すでに飽きられはじめていることをみても、店は三年周期で変えていかなければならない時代だと実感している。
そんなこともあって昨年11月8日に「五十六納屋橋倶楽部」を「なべ鐵」として新装オープンさせた。
そもそも居酒屋は、酒を主体に広く浅く料理がそろっているから居酒屋というんだけれど、逆にそれは中身をボヤけさせてしまっている。これからは居酒屋が持つ特徴を明確にすることが大切だと思う。
以前洋風居酒屋から始まって創作料理がはやり町に創作居酒屋があふれ出したことがあったが、これは意外にも早く沈滞ムードに。きちんとした基本を大切にそこからアレンジした創作料理ではなく、意味不明の実体のない料理を提供するコンセプトのない、ハコだけが先行していったのだろう。
「なべ鐵」は博多名物の鉄鍋餃子を前面に打ち出し特徴を持たせた業態。三〇~四〇坪を標準規模とした、一般サラリーマンやOLが気軽に入れる店が実現した。12月には伏見に二店舗目を出店し、「さかなやま」に続いて今年は「なべ鐵」の出店に力を入れたい。
「さかなやま」のこだわりは塩、醤油とかだしなどの調味料であって、決して魚素材や盛りつけ、器の演出ではない。スーパーなどで売られている魚をこだわりの調味料によってどのようにおいしく料理し提供できるかがコンセプト。いわゆる「食べるさかなやさん」で、自分が魚を食べたい飲みたい時に必ずあってほしい店づくりをめざした。今、直営店以外にも奈良に「さかなやま」のコンセプトで名称を変え運営しているクライアントもいる。要望があればそんな挑戦もしていきたい。
ただ何年か後には内容を少しずつ変えることは必要不可欠。今の「カッコよさ」から「昔からある居酒屋さん」への原点回帰もアイデアとしてある。
次々に新しいことを考え前に進んでいくのは、私にとっては何より楽しい。切り口は多方面に広がっている。先日も日本酒メーカーに話したことだが、発想を柔軟にしていただき、たとえば店内に樽を置いて量り売りで少しずつ提供するとか、日本酒に氷を入れたり炭酸で割ったりと、飲み方の多様なスタイルをもっと研究したらどうかと。メーカーの固定観念をおしつけていてはお客さんはついては来ませんね。
また、焼酎ブームを背景に新業態を構想中だ。希少価値の有名銘柄を置くのではなく、小さな藏のマイナーだがおいしくてリーズナブルな焼酎を探して売りたいと考えている。
一時有名デザイナーのつくるデザイナーズダイニングがまん延したが、特に狭い名古屋にあってはどこも同じような雰囲気の店ばかりが増えて飽きられはじめている。デザイン料も高く採算の問題もあって、当社は飲食店としての情報をきちんと積み重ねた上で、独自の店づくりを行うという方向転換を図っている。これからはデザイナーに頼らない飲食店の独自性を発揮する努力が必要ではないか。
今後の出店としては、12月に一店、3月末に一店、5月末に一店を予定しているが、既存店の業態変更も含めて積極的に攻勢をかけていきたい。立地的に名古屋駅近辺、堀川沿い、丸の内など新しい飲食エリアが広がっているが、結局名古屋の歓楽街はやはり錦三丁目に尽きる。郊外の居酒屋が苦戦を強いられている中、物件次第で錦へ出店をすすめていく。
◆(有)創三舎(名古屋市東区泉一‐九‐二六、電話052・973・1117)