日本のファストカジュアルを読む!:王利彰・清晃代表取締役
ファストカジュアル先進国の米国では、勝ち組と負け組がはっきりし、新しいファストカジュアルの店も次々と生まれている。
勝ち組になったのは、健康に配慮した食材と温かい出来たての料理を提供するファストカジュアルのコンセプトに、いま米国で三二〇〇万人が行っているという「アトキンスダイエット」(低炭水化物ダイエット)対応のメニューを開発できたところ。つまり「健康とダイエット」という二つの潮流を押さえた店が成功している。
とくに昨年以来のアトキンスダイエットの影響で、牛肉の消費量が上向き、ステーキやハンバーガーの人気は回復している。ファストカジュアルの元祖「ファッドロッカー」は、惣菜チェーンの「クックル」を買収し、ハンバーガーとローティサリーチキンの複合出店をしようと意欲的だ。
同様にファストカジュアルの代表格であったメキシカンの「バハ・フレッシュ」は近年売上げを落とし、負け組に転落した。要因は味のまずさ。いくら健康志向でイメージを訴求しても、おいしくなければ売れない。また「中西部では受けない」など、ローカルチェーンならではの地域差が顕著になっている。
ファストカジュアルの多くがこうした個性的な味やメニューを持っているローカルチェーン。バハ・フレッシュに限らず、全国展開を仕掛けていく上で、これがファストカジュアルの限界ともいえるだろう。
一方、こうしたファストカジュアルを傘下に入れ、成功ノウハウをメニュー開発に生かした大手ファストフードは業績を回復している。彼らの勝因は、全国展開できるスタンダードなメニューとシステムを構築できることだ。大手ファストフードチェーンは、買収したファストカジュアルを手元に残すかどうか思案中だろう。
しかし、これでファストカジュアルの市場がしぼんでしまうかというと、そんなことはない。彼らを支持している「食の動向に敏感で所得の高い若者たち」が、全体の消費動向に与える影響が大きいからだ。
新しく出てきたファストカジュアルチェーンは、ハンバーガー、ドーナツなど古典的なメニューが多い。米国人は食に対して保守的だが、毎日のように食べるとなると日本人でもおにぎりがいいように、飽きないものが好まれる。
その意味では、レストランを大衆化したファストカジュアルも、頻度が上がらず苦戦している。回転率が上がらなければ、単価の低いファストカジュアルにとって致命的だ。