近代メニュー革新!繁盛レシピ研究所:のり一「ラーメン」
一貫して庶民の味を守り続ける老舗、老若男女から親しまれている繁盛店。鹿児島のラーメン専門店「のり一」は、まさにその2つを両立する大衆店の鏡だ。店主の神川照子さん(74歳)は、亡き夫・松一氏と作り上げた、がらスープ主体の軽い塩ラーメンに思い入れ、1日800~1000人の常連客を集めている。照子さんは、いまも深夜まで接客に追われる毎日だが、「戦争を経験したので、どんなに忙しくても苦はない。働けるだけ幸せ」と笑みをこぼす。創業から61年間、飽きのこない優しい味で大衆の胃袋を満たしてきた鹿児島名物を紹介する。
◆営業の概況:かつては1日1,500杯以上 深夜まで満席が続く
創業は1949年。立地は鹿児島の繁華街、天文館の端。メニューはラーメンとライスだけ。客層は老若男女問わず幅広いが、とくに居酒屋帰りのお客が多いことで有名。夜9時から深夜までは、締めラーメン目当ての常連客で満席が続く。
81年に現在の店舗に改築した。カウンター12席、テーブル席4席と、以前よりも規模は半減したが、それでも1日平均800杯、繁忙期は1000杯強に達する。改築前はバイク10台、自転車10台で出前を展開し、夜学生10人が住み込みで働き、1日1500杯を超えたという。
ラーメンの価格は中300円、大350円。夜8時以降は100円アップする。これは、ピークタイムの深夜過ぎまで働いてもらう従業員の賃金引き上げを反映させたもの。
◆特徴と調理:軽くシンプルな味わい 体によいことで有名
ラーメンは極めてシンプル。がらスープは、鶏がら8、豚骨2の割合で2時間炊いたもの。これに食塩と隠し味の醤油を加えれば完成。麺は中太ストレート120g(生)。具材は黒豆モヤシ、煮豚、青ネギだけ。これにテーブルにある食塩、コショウ、ニンニク、七味唐辛子を加えて自分好みの味に調える。小鉢で添付される大根の酢漬けとラーメンを交互に食べるのが“のり一流”だ。
また、“もはや芸術作品”と評される極薄の煮豚2枚も必見。「1枚より2枚の方が見栄えがよく、子どもも喜ぶだろう」という松一氏の配慮だとか。
味は非常に軽く、アッサリ好きの女性や高齢者には最適だが、コッテリ好きの男性には物足りない。だが、酒飲み後の締めラーメンとしては格別においしい。時間帯別に客層が極端に変化するのも、連日通いのお客が多いのもうなずける。
神川店主は、「うちのラーメンは健康によいことで有名なんです」と胸を張り、「いまだ私が店に立っていられるのも、毎日このラーメンを食べているおかげ」と声を弾ませる。
◆発祥と展開:進駐軍勤めから転職 自家製麺に切り替えた転機
1949年、進駐軍に勤めていた松一氏は、妹の夫(台湾人)からラーメン作りを教わり、1杯50円で創業。その後、照子さんと結婚し、夫婦で切り回してきた。
大きな転機は65年。なかなか値上げしないため、製麺業界から圧力がかかり、麺の仕入れがストップ。窮地に追い込まれたのだ。松一氏は「だったら自分で作ろう」と決断し、製麺機を購入。試行錯誤で自家製麺を作り上げ、76年まで1杯50円を続けた。その製麺機は現在も店の上の階で稼働している。
7年前に松一氏は死去。その2年前に入店した甥の松田夫妻、照子さんが引き継いでいる。
◆店舗情報
「のり一」 所在地=鹿児島県鹿児島市山之口町9-3 神川ビル1階/営業時間=午前11時半~翌午前3時、日定休
◆エバラで再現!模擬レシピ
●作り方
「鶏湯〓(ヂータンシャン)」と「肉湯〓(ルータンシャン)」を6対4の割合で合わせ、お湯で20倍に希釈し、スープとする。食卓塩を加えて好みに調味し、隠し味に少量の醤油を加える。
●使用食材
チキンがらスープ 鶏湯〓(ヂータンシャン)
がらスープ 肉湯〓(ルータンシャン)
規格=各パウチ1kg
香味野菜とともに丹念に炊き出し、炊き出した香りをそのままに作り上げた濃縮スープ。親鶏をベースにした「鶏湯〓」、豚骨・豚肉と親鶏骨・鶏肉をベースにした「肉湯〓」がある。スープベースとして使用する場合は20倍希釈が目安。
※〓…香の下にレンガ(香の下に点々4つ)、造字。