こだわりの炭火七輪「山海炭火焼・夢しちりん」
焼き肉店や郊外居酒屋がファミリーをターゲットに勢いにのっているが、それらをうまくマッチさせた新タイプの焼き肉居酒屋「山海炭火焼・夢しちりん」が昨年11月に金沢にオープン。独自性のあるコンセプトが人気を呼び、開店時からぐんぐん売上げを伸ばしている。
「当店は炭火七輪焼きにこだわる、あくまでも焼き肉メーンの店」(加護店長)としているが、カルビにロース、タンやホルモンといったなじみの焼き肉メニューのほかに、焼き素材のバリエーションは多彩だ。さらに、居酒屋メニューの定番おつまみ、冷や奴や茶碗蒸しもひと味工夫を凝らして用意。このあたりが、焼き肉店のイメージを広げて居酒屋に近づけたことになる。
さて、入り口で靴をぬぎ板張りの店内に入ると、まず目に飛び込んでくるのはテーブルにおかれている七輪。店名の「夢しちりん」が示すとおり、ここでの主役だ。昭和初期の照明や自然素材のテーブルやイスと相まって店内はレトロ色が強い。BGMも月曜から金曜はオールデーズ、週末はジャズ。
「中高年には懐かしく若い層には新しい感覚で、共通のくつろぎ感を感じてもらえる。幅広い客層を取り込む演出」(加護店長)は万全だ。
「郊外型のともすれば元気のいい焼き肉店にはない、ゆったりとリラックスできる店をつくりたかった」と話す。
「七輪の炭火で焼くのがおいしいことは、だれでも知っている。でもやはり煙の問題で店内ではなかなかむずかしかった」
そこで炭火の有煙対応のノウハウを持っている金沢の専門メーカーと相談の上、いろりの上にあるじざいかぎのイメージで排煙ダクトオリジナル版(登録済)を開発した。
「焼いている素材からのぼる煙も素材のジューシー感を増す役目を果たす。さらに楽しさやおいしさへのビジュアル的な演出にもなった」
「あれも焼きたい、これも焼きたい」という気持ちを満足させるためにメニューは、焼き肉に加えて輪島や土佐、北海道などから産地直送される新鮮でめずらしい魚介類を用意した。
根室のめおとシシャモ(二匹四三〇円)、北海道のシャケトバ(三個三八〇円)、氷見のホタルイカ一夜干し(三八〇円)、キビナゴ一風干し(四三〇円)、土佐のウツボ唐揚げ(三五〇円)など地方の特産にこだわって差別化を図っている。
アルコール類もビールが主になるが、石川県の地酒「あらばしり手取り」(吟醸生酒)や赤玉ポートワインをベースにつくったオリジナルカクテルが人気。やはり、近ごろの客はどこにもないものに飛びつくことが分かる。
焼き肉店の競争が激化する中、差別化には苦労するところだが加護店長は、新しいタイプの焼き肉店を計画中であれば相談にのります、とのことだ。
人気メニューはカルビ、塩ホルモン、貝焼きの順。客席数は五四席、客単価二八〇〇円で、月商四〇〇万円。
◆「山海炭火焼・夢しちりん」(金沢市八日市町四‐三三四、Tel076・269・0039、営業時間午後6時~11時)