新店ウォッチング:「シナボン」吉祥寺サンロード店

2000.03.06 199号 4面

ハワイなどで日本人にもなじみの深い米国アトランタのシナモン・ロールチェーン「シナボン」が、東京吉祥寺に出店し、ついに日本に上陸した。

シナボンは一九八五年に米国シアトルで創業、北米を中心に約四〇〇店を展開している。親会社はコーヒーチェーンのシアトルズベストコーヒーなども手掛ける外食企業のAFCであるが、日本国内での展開は、愛知県を中心にラーメン、ソフトクリームなどのファストフード「スガキヤ」を約三三〇店展開するスガキコシステムズ(名古屋市)が営業権を取得、昨年暮れに東京・吉祥寺のメーンストリートであるサンロードの中心部に一号店を出店した。

シナボンは、米国ではよく知られた「シナモンロール」という甘い菓子パンを販売するファストフード店であり、主要な商品は数種類のシナモンロールとドリンクのみという生産性の高い業態である。

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シナモンロールという商品自体は、これまでもわが国の多くのファストフードチェーンなどが導入しているが、シナボンのシナモンロールは、インドネシア産の「マカラ」シナモンという厳選されたシナモンや黒砂糖などの原材料を使用し、独自の製法で作り上げたオリジナル商品であり、クセのある独特の甘さやシナモンの香り、トッピングなどによって他店の商品とは完全に差別化されたオリジナル商品となっている。

商品は、驚くほどの大きさだが、同社の標準的なシナモンロールであるシナボン(三五〇円)と、小ポーション型のミニボン(二七〇円)、ペカンナッツをトッピングしたピーカンボン(四〇〇円)の三種類とドリンクのみで、そのほかに、テークアウト用エキスプレスパックとしてシナボン(四ピース、六ピース)、ミニボン(九ピース 、一五ピース)、ピーカンボン(四ピース)があり、どれも単品で購入するよりも一〇%ほど割安の料金設定となっている。

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一号店の吉祥寺サンロード店は、吉祥寺駅前から続く、古くから有名なアーケード商店街「サンロード」の最も繁華な一角にあり、周辺はドラッグストアのマツモトキヨシやドトールコーヒーなどが出店するメーンストリートである。路面店ではあるが、日本型のショッピングモールであるともいえる屋根付きのアーケード商店街の中にあり、ピーク時には、同店の店頭から隣接するドトールコーヒーのショップ前までテークアウトの行列が並ぶというほどの繁盛ぶりである。

店舗は、青と白を基調とした米国のショッピングセンター内店舗の雰囲気を再現したもので、一階が製造・販売カウンター、二階が客席という二層型の構成になっている。同社では、今後五年間で首都圏に四五店、中部地域で一五店の計六〇店を出す予定であるという。

今年から来年にかけてブレークすると思われる商材のひとつは、パン(特に菓子パン類)であると筆者は予想しているが、このシナボンの繁盛ぶりは、その予測を裏付ける好例だ。

事実、インターネットで「シナボン」を検索すると、数百件のページが表示される。そのほとんどは個人のページであり、海外旅行、特にハワイでのシナボン体験を語ったものが多い。独特のクセになる甘さとシナモンの風味が、日本上陸の前から、すでに多くのファンをつかんでいたということが、同店の圧倒的な人気の秘密であろう。

米国では、本来ショッピングセンター(モール)内の出店が圧倒的に多いシナボンを、当初想定されていた渋谷などの都心立地ではなく、吉祥寺というエリアで、あえて路面店(しかも、わが国独特のアーケード商店街の二層型店舗)で出店した点は、かなり明確な立地戦略を感じる。

平日の昼間から、持ち帰りの女性客などがアーケード内の路上に列を作って並ぶという繁盛ぶりで、まだ運営のシステムが完全に構築されているとはいえない現状では、従業員にいくぶん疲れも見えているが、この勢いで、久々の外資系ファストフードの大型チェーンが誕生するかどうかは、今後のオペレーションと店舗システムの改善にかかっているといえるだろう。

なお、米本国では圧倒的な量の多さで度肝を抜く「モカラッタ・チル」などのドリンクが、わが国の標準サイズになっていたのが、ちょっと残念であった。

◆「シナボン」吉祥寺サンロード店(武蔵野市吉祥寺本町一‐九八、0422・23・7321)、開業=一九九九年12月8日

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