花開くかハンガリーフード、フォアグラなど豊富な食材
ヨーロッパの中央に位置するハンガリー共和国。これまで東欧圏に属していたために食材でのつながりがあまりなかったが、それでも、日本市場では現在、世界の珍味と絶賛されているフォアグラは六〇%のシェアを占め、三大ワインの一つである貴腐ブドウのトカイワインをはじめとするハンガリアンワイン、料理の香味付けに必須のハンガリアンパプリカなど、“知る人ぞ知る”食材は多い。
ドナウの流れ、緑の大平原のイメージそのままに、ハンガリーは肥沃な土地に恵まれた農業国である。小麦などの穀物をはじめ、ハンガリアンアップル、アプリコットなどの果物、パプリカ、ホワイトペッパーなどの香味野菜やトマトピューレ、ジャム類、はちみつ、ヒマワリ油など多種多彩である。
豚、牛、羊、山羊の牧畜も盛んである。乳製品では羊乳の独特な風味のチーズ、食肉加工ではサラミ、ソーセージなどがある。
先に開催されたfoodexには、ハンガリー食品産業の「今日と明日」をテーマに一四社が出展、新食材とメニュー提案不足のフードサービス業界から、中央ヨーロッパの新食材として関心が寄せられた。
ハンガリーは今年初代国王戴冠一〇〇〇周年記念を迎えて、内外で数々のイベントが催される。日本でも、日本ハンガリー友好協会を中心に各地域で文化事業が繰り広げられる。
こうしたことから、今年の日本市場は、ハンガリーの歴史的文化、伝統的な食文化を背景にした「ハンガリアン・フード」が、大きく花開く導入期として位置づけられそうだ。
ハンガリー料理は、東洋的な味をベースにしたものが多いだけに、日本人の舌を魅了するものと期待される。
ハンガリーの食文化は、もともとはアジア系だったが、建国一〇〇〇年の間に小国なるが故に支配、侵略からのヨーロッパ的、ゲルマン的、トルコ的、周辺諸国のそれぞれの文化が融合されながらできたという歴史的な背景と、大平原に代表されるヨーロッパでは珍しいほどの気候的、肥沃な地質といった地理的現象が重なり、豊かな食文化が育まれてきた。
英、仏、独のヨーロッパ各国で、またアメリカの各都市で、ハンガリー料理店が繁盛しているという。その代表メニューに「グヤーシュ」(肉のスープ)や「ハラーレス」(漁師のスープ)、ビーフやポークのシチューなどが挙げられる。
そこで、ハンガリー共和国のセルダヘイ・イシュトヴァーン駐日特命全権大使にハンガリーメニューについて聞いた。
最初のオードブルだが、ハンガリー料理の中では冷たいスープといって「ハラーレスのゼリー」や「ティハニのスズキ料理」があり、大変おいしい。世界的に有名な特徴のあるソーセージ、サラミがあり、一度、パンや野菜と一緒に食べてみてください。
スープですが、ハンガリーは伝統的に豚や牛、それに鶏の飼育が盛んで、当然それらを使った料理が盛んです。グヤーシュは、たっぷりとしたスープに玉ネギ、パプリカ、角切りのジャガ芋、チペトケに牛肉や豚肉などの肉類をたっぷり入れます。パプリカをたっぷり使うメーンディッシュにもなるスープです。
グヤーシュという言葉の意味ですが、ハンガリー語で大平原で牛を飼う職業のことです。彼らは大平原に自分で火をたいて鍋にスープをじっくり煮込んで作った料理がグヤーシュで、世界中に愛好家がいます。
このほかにスープは、豆や肉のスープ、また魚のスープも有名です。特に魚のスープは大変スパイシーな味となっています。
日本ではエスニック料理が盛んですが、こうした特徴のあるハンガリー料理も多くの方が気に入ってくれるのではないでしょうか。メーンディッシュはもちろん肉料理ですが、鶏やガチョウなどほかの肉料理も大変盛んです。デザートは、どちらかといえばヨーロッパ的なものが多く、クレープやケーキなど有名なものがあります。その中の一つ、ブダペストにあるジェルボという優雅な喫茶店の伝統的なケーキ「ドボシュートル」は有名です。
ハンガリーの食文化を通して、日本でも売れるものがいくつかあります。フォアグラはトップシェアです。ジャム、はちみつ、チーズも売れています。特徴のある冷凍野菜などはすぐにメニューに結びつきます。