福岡・夏向け中華麺:北京料理「東海楼」

2000.04.17 202号 7面

ゆでたての太麺の上には、特製の肉味噌と千切りのキュウリがたっぷりと。お客は小皿に別盛りされた白ネギとホウレンソウを好みで加え、ザクザクまぜて、豪快にいただく。

飽きることなく一気に平らげた後には、さっぱりとしたうまみだけが口に残る。炸醤麺(ジャジャメン・七〇〇円)は、本格的な北京料理を継承する東海楼の中でも、「通が好む麺料理」として知られている。

おいしさのポイントは麺にからむ肉味噌の味。まろやかな甘みは砂糖をいっさい使わず、赤味噌と豚バラ肉を炒めるだけで出していく。これにタケノコやキュウリなどの野菜を加え、まったりとした中にもコリコリとした歯ごたえのある肉味噌が完成。シャキシャキした白ネギやホウレンソウを麺と一緒にまぜ合わせれば、食感はさらに楽しくふくらむばかりだ。

素材を吟味し、厨房を仕切るのは二代目店主・郭健興(かく・たけひろ)さん。店は昭和30年代に創業。「当時はまだ周りに大きな店もなく、道路も舗装されていないころでした」と言う。今や、通りを隔てた店の向かいには、若者でにぎわう大型ファッションビルが。天神への玄関口・西鉄福岡駅からも歩いて三分。時代とともに店の土地は一等地になった。

しかし、場所がいいだけに競争も激しい。伝統を守りつつ、お客が飽きないためにはどうすればいいか。「時代に遅れないように、常に新しいものを加えていく柔軟性が必要です」

たとえば、お客の声を反映させたメニュー構成。エビのチリソース(二〇〇〇円)など、北京料理の域を越えた料理も看板メニューとして定着。「それでもどこかに必ず、うちならではの工夫を凝らします」

ニーズにこたえるだけでなく、オリジナリティーの追求も忘れない。

天神という場所柄、周囲には華やかなビル群が建ち並ぶ。そんな中にあって清楚な店構えは、どこかホッとする存在だ。

「派手さはないけれど、だれもが飽きのこないおいしさを、丁寧に」

味への正直なこだわりがそのまま表れた外観に、若者から熟年まで幅広い年代層が安心感を覚え、扉をくぐる。

移り変わりが激しい繁華街の中心地で残り続けている。時代に流されない店には、味にもたたずまいにも、静かな自信が感じられる。

◆北京料理「東海楼」/所在地=福岡市中央区天神二‐六‐一二、092・741・8980/営業時間=午前11時~オーダーストップ午後9時30分、定休日第二、三月曜(祭日の場合など開ける場合もあり)/店主名=郭健興/席数=一階一六席、二階・三階各二四席

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