この1品が客を呼ぶ:1日450食ラーメン「山頭火」

2000.06.05 205号 10面

最近、テレビやグルメ雑誌などで取り上げられることの多い塩ラーメンだが、ブームの火付け役ともいえるのがここ「山頭火」。北海道・旭川からラーメン激戦区である恵比寿へ進出、今や1日400~450食も出るという人気メニューだ。

全国で二二店舗のチェーン展開をしているラーメン専門店の山頭火だが、わずか五年前までは北海道・旭川に一店舗を構えるのみだった。その旭川で修業を積み、東京進出を果たしたのが、ここ恵比寿店のオーナー、藤田洋さん。

藤田さんは山頭火の味に絶対の自信を持っていたため、あえて数多くのラーメン店がしのぎを削る激戦区、恵比寿に出店することを決意。その自信はすぐに形となって表れた。口伝えで評判を呼び、行列の絶えない人気店になったのだ。

そんな山頭火で最も人気の高いのが塩ラーメン(八〇〇円)だ。これこそが今日の塩ラーメンブームの火付け役ともいうべきものであり、また全国二二店舗ものチェーン展開をする足がかりになった、山頭火の看板メニューなのである。

「オープン当初は一日三〇食の限定だったんです。というのも、塩ラーメンは醤油や味噌を加えるわけじゃないから、風味が飛んでしまったらだめなんです。作って三時間以上たったスープは、もう商品価値がないんですね。味を落としてまで量産したところで、お客様に喜んでいただけるはずもないし、私も山頭火の看板に泥を塗るようなことはしたくなかったですし。まあ逆に、三〇食限定としたところに希少価値みたいなものがあって、それが人気の一因だったんじゃないかとも思うんですけどね」

と控えめな藤田さんだが、自慢の塩ラーメンには随所にこだわりが見られる。

だしはげんこつ、玉ネギ、ニンニク、椎茸、ジャガ芋、タラのすき身などを基本素材に使用。さらに塩だけの味では角があるとして、まろやかにするために企業秘密である乳製品を塩だれに加える。これによって、従来の概念を覆すような、独特のコクと風味をもった塩ラーメンに仕上がるのだ。

げんこつを一〇〇%使用するスープは、一四時間かけてじっくり煮込む。そして以前は一日一回しかできなかったスープ作りを、一日五回のローテーションで行うことにしたため、数を限定しなくても提供できるようになったというわけだ。結果、今では一日四〇〇~四五〇食もオーダーが入るほどの人気になった。これは店全体のオーダーの四割を占めるとのことで、東京のラーメン店としては極めて珍しい。

自慢はスープだけではない。毎日旭川から空輸される麺は、本場の特注麺を使用。水分が少なく、塩分が多めで、防腐剤を一切使用していないのが特徴。これを硬めにゆでることによって、コシがありながら風味豊かで、スープにからみやすい麺になる。

山頭火のラーメンは、醤油、味噌(各八〇〇円)、塩の三種類を基本として、それに豚のホホ肉をトッピングするトロ肉ラーメン(一二〇〇円)があるのみ。とろけるような口当たりのホホ肉には根強いファンも多いが、これは一日三〇~四〇食の限定メニューだ。

ラーメン激戦区の恵比須にあって、ラーメン通の舌をうならせ、なおかつ飽きさせない山頭火の塩ラーメンは、こだわり抜いたスープとコシのある麺を最高の状態で提供しているからだ。

東京で成功した今、ロンドンでもニューヨークでもロスでも、世界中の国々で勝負してみたい、と目を輝かせる藤田さんだった。

◆「山頭火」=東京都渋谷区恵比寿一‐四‐一、恵比寿アーバンハウス一一〇、03・5421・0336/坪数・席数=一〇坪・一二席/営業時間=午前11時~午後10時(土・日・祝~午後8時)、無休

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